02/07/05
■ 「薬剤耐性緑膿菌」とはどんな緑膿菌ですか ???
【質問】
 お世話になります。いわゆるケアミックスの病院につとめている内科医です。
今回2回目の質問です。よろしくお願いします。「薬剤耐性緑膿菌」についての質問です。
(1) そもそも, その定義はどのようなものでしょうか?? 感染症新法の検査室での判断基準では, イミペネム, アミカシン, シプロフロキサシンの耐性ということになっていますが, それが厳密な定義として医学界に定着しているのでしょうか? それとも行政上の規定でしょうか? 当院ではイミペネムはおいておらず, メロペネムをいれているのですが, 感受性試験では代用して判断してよいものでしょうか? (日本医師会雑誌の「感染症の診断・治療ガイドライン」を読みますと, カルバペネム, アミノ配糖体, キノロン系の三系統の耐性があれば, 薬剤耐性としてよいような記述があるのですが, はっきりしません)
(2) そもそも, “薬剤耐性緑膿菌”ということばですが, 何故,, “多剤耐性緑膿菌”と言わないのでしょうか? 英語では“multi drug-resistant P.”となっていると思うのですが?

【回答】
 平成11年4月より施行された「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」の中で「薬剤耐性緑膿菌感染症」の定義は「ペニシリン剤, β-ラクタム剤等多くの薬剤に対して耐性を示す緑膿菌による感染症である」とあります。そして検査室での判定基準は以下の3つの条件をすべて満たした場合です。すなわち;

(1) イミペネムのMIC 16 μg/ml以上またはイミペネムの感受性ディスク (KB) の阻止円の直径が13 mm以下
(2) アミカシンのMIC 32 μg/ml以上またはアミカシンの感受性ディスク (KB) の阻止円の直径が14 mm 以下
(3) シプロフロキサシンのMIC 4 μg/ml以上またはシプロフロキサシンの感受性ディスク (KB) の阻止円の直径が15 mm以下です。

 多くの検査室は上記の基準に従って実施, 判断しています。
 我々の実験では, 緑膿菌に対するイミペネムとメロペネムの抗菌力を比較しますと, 一般にメロペネムの方が抗菌力が強い傾向が見られました。従って代用はしない方がよいと考えます。
何故, “薬剤耐性緑膿菌”となったかについては, はっきりしたことは不明ですが, 今回の感染症新法ができる以前から, 薬剤の系列を顧慮に入れないで, 薬剤の数だけを基準にした耐性株を“多剤耐性緑膿菌”という言葉で広く表現されていたために, 今回判定基準を設けて整理したのではないかと推察します。なお詳細は厚生労働省に直接, 質問していただければはっきりすると思います。

(愛媛大学・村瀬 光春)

[戻る]