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【質問】
ブドウ糖を含む血液寒天培地では, “本来β溶血を示す菌種でもα溶血を示すことがある”と本で読みましたが,
そのメカニズムを教えてください。よろしくお願いいたします。
【回答】
β溶血には酸素安定性のS溶血素と酸素不安定性のO溶血素が関与するといわれています。溶血レンサ球菌が好気培養条件下で血液寒天平板上にβ溶血を起こすのは,
酸素安定性のS溶血素によるものです。S溶血素はブドウ糖などの還元糖により溶血作用の抑制を受けますが,
これは還元糖の含まれた培地に菌が発育することにより, 培地中のpH低下が起こり,
S溶血素が低いpHで不活化されるためと考えられています。またO溶血素はα溶血を起こしますが,
これは培地中に過酸化水素が産生され, ヘモグロビンの鉄が酸化してメトヘモグロビンあるいはこれに関連した物質の形成により,
血液寒天を緑色に変化させます。O溶血素のみではβ溶血は起こりませんが, 好気培養条件で還元糖を除いたり,
カタラーゼを添加することにより, また嫌気培養条件下では過酸化物形成の抑制やカタラーゼで過酸化物を分解すれば,
β溶血を起こすようになります。血液寒天培地での溶血が, 基礎培地に添加する血液の種類,
ブドウ糖の有無により変化することを利用したのが“小林の分類”です。
(愛媛大学・宮本 仁志)
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