■ Bacillus cereusとB. thuringiensisの鑑別同定 | ||||
【質問】
現在, 食品関係の協会で食品の食中毒菌のテストをしております。質問は, Bacillusグループの中でBacillus cereusとBacillus thuringiensisとの鑑別同定についてです。食品から検出した菌がBacillusグループであるとVitekで確認作業後, その菌を染色し, B. thuringiensisが作る特有の蛋白毒の有無を顕微鏡で確認し, いずれの菌であるか確認する作業を行っております[http://www.cfsan.fda.gov/~ebam/bam-14.html]のG-4の作業です。しかし, この工程に経験が浅く, スタンダードのB. thuringiensisの染色スライドを確認しても, どこが蛋白毒部分であるのか確実に観察できません (G-4方法がG-1から5の中で比較的容易に結果が同定できると助言を受けていたのですが)。いくつか文献をあたった結果, 通常の顕微鏡を用いた映像だと細胞内の濃いピンクの点として見えるということですが, 実際自信を持って同定結果を確定できません (恥ずかしながら, 見方によってはB. cereusとB. thuringiensisの両方に同じ濃いピンクの点が観察できるので)。この同定結果を確定するためのアドバイスを頂けないでしょうか (写真例, 染色時の注意点等々)。もしくは, 上記2種の菌の同定作業で簡単なテスト法 (それぞれの毒素の簡易同定キット・・・比較的安いもので) などがありましたら是非お教え頂けないでしょうか。どうぞ宜しくお願い致します。 【回答】
顕微鏡写真は, Bacillus thuringiensis NBRC 13865株を普通寒天培地で30℃, 24時間培養 (写真1: 毒素結晶は観察できません) し, その後室温で1週間放置 (写真2, 3: 今回の芽胞は既に栄養細胞の状態に移行し始めているため, 染色されて赤く染まっています。若干ぼやけていますが, 芽胞より小さく濃く染まっているのが毒素結晶) した菌体です。 拡大率1,000倍の油浸レンズで観察すると, “そろばん玉”を上から見たように見えます (菱形)。また, 芽胞の傍に分布することが多いため, まず芽胞を視野の中で探し, 芽胞より小さく濃く染まっている毒素結晶を見つけるのがコツです。ゴミや色素などと間違えやすいですが, 毒素結晶の形状は同じものが揃っているので, 多くの視野を観察しながら, “そろばん玉”のようなものを捜して行けば間違いません。昔, 数学で学んだと思いますが, 投影法を思い出してください。円柱は, 上から見ると丸, 斜め上から見ると楕円形, 真横から見ると長方形です。油浸レンズによる染色像の観察には, 投影法の考え方が必要です。簡単な図を添付しましたので参考にしてください。 上記のように, 色素がスライド上に残って毒素結晶と間違える可能性を少なくするために,
染色液は自家製ではなく, 市販のものを勧めます。今回は, チ_ルネルゼン液 (和光純薬:
277-09795) を使用しました。また, 電子顕微鏡写真が[Applied and Environmental
Microbiology 64 (10): 3910〜3916, 1998]に掲載されていますので参考にしてください。以下に,
Bacillus
thuringiensis毒素結晶の検出法を記載しました (加温染色は若干の経験が必要です)。
(投影図) [参考文献]
(日水製薬・小高 秀正)
【質問者からのお礼】 非常に詳しい回答および写真, 図, 大変参考になりました。本当にありがとうございました。質問を研究会のサイトに送った後, 色々試してみていましたが, 一番の決め手は染色液を新しくした後, 結晶体が見易くなりました。今後はご指摘のように市販のものを使用したいと思います (今まで自家製のものを使用してました)。本当にありがとうございました。今後ともどうぞ宜しくお願いします。 |