■ Bacteroides fragilisの培養 | |
【質問】
私は アメリカ合衆国●●大学医学部病理学教室でポスドクをしております■■と申します。腸内細菌に対する宿主の応答性に興味を持ち, 腸内細菌, 特にBacteroides fragilisの培養をしたいと思っております。文献では, 「Reduced BHIS培地 (BHI培地にヘミン, メナジオンを添加した培地) で嫌気的に培養」と書いてありました。私たちの研究室には, 嫌気培養施設がなく, 今のところ, 嫌気パック内での培養のみしかできません。先日, BHI brothで静置培養をしてみたのですが, まったく菌発育が見られませんでした。私たちの研究室でもBacteroides fragilisを培養することは可能なのでしょうか。もし可能であれば, その方法を教えていただけないでしょうか。 また, 嫌気性の菌株の保存にはグリセロールではなく, スキムミルクの方がやはり適当なのでしょうか。ご教授いただけると幸いです。どうぞよろしくお願いいたします。 【回答】
さて, 適当な試験管でヘミン添加BHI Brothを作ります。BHI brothにはヘミンを5μg/mlの濃度になるように添加する必要があります。メナヂオンは省いても発育するでしょう。 〔へミン液ストック溶液 (5 mg/ml)の作り方〕
〔Vitamin K1ストック溶液 (1 mg/ml) の作り方〕
高圧滅菌の完了したへミン添加BHI brothを高圧滅菌器から出し, 流水中ですばやく冷却し, 大気中に長時間放置することなく, 早めに嫌気バックの中に入れ, 1日嫌気状態で放置します。これを予備還元したヘミン添加BHI brothと考えて下さい。 嫌気バッグ中で培養した寒天培地上の数コロニーを, 嫌気バッグから取り出した予備還元したBHI brothに速やかに接種し, 速やかに新しい嫌気バッグの中に移して培養してください。静置培養でも48時間〜72時間で十分な混濁が見られるはずです。 別法として, ヘミン添加BHI brothを前日に作って, 大気中に保存し, 使用前に沸騰水中で10分間程度加熱し, 流水中で急冷して (脱気した培地という), 直ちに菌を接種し, 直ちに嫌気性バッグ中で嫌気的に静置培養しても十分発育するでしょう。菌を多めに接種することが“こつ”です。 菌株の保存は, 分散媒の種類よりも, 温度のほうが重要です。マイナス70℃以下の低温が必要です。私どもはスキムミルク溶液を使っています。 (岐阜大学・渡邉 邦友) |