06/03/22
06/03/27
■ 馬尿酸塩加水分解試験について
【質問】
 “馬尿酸塩加水分解試験”について教えて下さい。1% 馬尿酸ナトリウム水溶液を4 ml分注して?20℃で保存しているのですが, この水溶液 何mlに対して, ニンヒドリン試薬を0.2 ml添加するのでしょうか??? 私は, 馬尿酸Na水溶液0.5 mlにニンヒドリン試薬0.1 mlを添加しています。この方法でよいのでしょうが・・・ご意見を頂ければ幸いです。よろしくお願いします。

【回答】
 馬尿酸は, 馬尿酸加水分解酵素 (hippulicase) によって,安息香酸とグリシンに分解されます。ニンヒドリン試薬は,このグリシンを検出するための試薬ですが,質問者が実施されているのは“Hwang-Edererの試験”ではないかと思います。「新 細菌培地学講座−下−」(近代出版) に記載されているこの方法の手順について紹介します。

Hwang-Edererの試験試液

・馬尿酸ナトリウム1%水溶液
 ネジ栓付き試験管に0.4 ml ずつ分注し,−20℃で凍結保存する。

・ニンヒドリン溶液
 ニンヒドリン    3.5 g
 アセトン,ブタノール等量混合液 100 ml
 密栓して4℃に保存する。

Hwang-Edererの試験方法

 凍結しておいた試験試薬 (馬尿酸ナトリウム1%水溶液) を解凍して,培養した新鮮な菌1白金耳量を接種し,35℃に2時間置いた後,ニンヒドリン溶液0.2 ml (5滴) を加えて,35℃に10分間放置する。「陽性」のときは青紫色となり,無色またはうすい紫色にとどまるものは「陰性」とする。

 この方法は,予め試験に必要な量の0.4 mlを試験管に分注して凍結し,解凍した試験管に直接,被検菌を接種するという方法です。つまり,馬尿酸ナトリウム1%水溶液 0.4 ml に対して,ニンヒドリン溶液を0.2 ml 加えることになります。これが正式な方法だと思いますが,カッコ内に“5滴”と記載しているように,厳密なものではなく,大まかな目安だと思います。ただ, 冷蔵保存したニンヒドリン試薬は,繰り返し使用していくうちに劣化してくることがありますので,馬尿酸加水分解試験が陽性の菌株 (Streptococcus agalactiaeなど)を用いて試薬の性能を確認しておくことも大切です。市販品も発売されています。

(公立玉名中央病院・永田 邦昭)


【質問者からのお礼と追加質問】
 この度は, 一つ一つ丁寧に教えて頂きありがとうございました。私が何故, この質問をしたか理由を書くべきでした。すみません。Campylobacterの分離をしています。その工程の中にあるこの試験の方法を調べたのですが, 見つかりませんでした。今回のこの回答をもとにもう一度実験してみます。またネット上で見たことなのですが, ステック法による市販品 (ヤトロン社) のものは10分程度で結果が出るとのことですが, 詳細を教えて頂けませんでしょうか。やはり検査をする時間がかかるのがこの試験なのです。お忙しい中, メールを送ってしまい, すみません。宜しくお願い致します。

【回答】
「RID Zyme HIP-Mテスト」の名称で販売されています。試薬構成は (1) 馬尿酸ナトリウムを染み込ませて乾燥させたHIP-Mスティック, (2) 反応用専用緩衝液, (3) ニンヒドリンを染み込ませて乾燥させたニンヒドリン・ディスク, (4) ニンヒドリンを抽出する2-メトキシエタノールです。予め, ニンヒドリン抽出液にニンヒドリン・ディスクを入れて抽出します (保存は遮光密封, 2〜10℃で2週間, ?10℃以下で1ケ月有効)。ガラス小試験管に専用緩衝液を1滴入れ, 試験菌を1コロニー, HIP-Mスティックで釣菌し, 試験管に入れ, パラフィルムで覆い, 35〜37℃1時間反応させます。室温に5分間放置した後, 抽出したニンヒドリン溶液を15μl滴下し, 35〜37℃で10分間反応させます。濃紫色に呈色したら「陽性」と判定します。Campylobacter jejuniStreptococcus agalactiae (B群溶連菌) の同定に使用します。頻繁に分離同定試験がある施設では便利な市販品といえます。

(琉球大学・山根 誠久)


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