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【質問】
私は大学で微生物学を学んでいるものです。駆け足で一通りの講義は終わったのですが,
まだまだ基本がきっちりと出来ていない状況です。
BCG接種について教えて頂きたいと思い, このメールを送らせて頂きます。それは,
従来と現在とで接種の状況が変わったらしいことについてです。従来は3歳未満,
小学校, 中学校において (ツベルクリン反応) 陽性, 陰性を調べ, 陰性であればBCGの接種していたと習ったように思うのですが,
これでよいでしょうか。また, 現在は0歳で1回接種となっているようですが, このように変更されたのは,
どういった根拠からでしょうか。また, この根拠の1つとして, 1度BCGをして陰性であれば,
もう陽性にはならないとのことですが, これはどういうことでしょうか。ご回答をお待ちしています。
【回答】
かつて結核は, わが国の国民病とも云われ, 日本全体に蔓延し, 多くの患者さんが命を落としていました。抗結核薬の開発と共に治療成績が著しく改善され,
結核の患者や死者は, 戦後は減少し続けていましたが, 最近ではこの減少率が鈍り,
対策の必要から警鐘がならされています。結核は感染力が強く, 危険な感染症であるため,
国でも行政面からBCGの接種やツベルクリン反応検査などの実施を法的に義務づけてきました。質問にありますように,
時代の変化ともに見直しが必要になりました。それは, BCG初回接種後 (0歳)
のツベルクリン反応の繰り返しやBCGの再接種は, ツベルクリン反応において追加免疫によるブスター現象を生ずることになります。この結果,
真の結核感染か, ブスター現象であるのか, 判定結果の解釈を複雑にします。真の結核感染を明らかにするために,
このような変更がなされています。また最近では, 二段階ツベルクリン反応検査が定着されつつあります。BCGを実施して陰性であれば,
陽性にはならないと決めつけることはできません。ツベルクリン反応はT細胞が関与する細胞性免疫によるものですので,
このような事例では細胞性免疫能などを調べる必要があります。
(近畿大学・古田 格)
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