06/11/22
06/11/27
■ βラクタマーゼの産生率
【質問】
 いつも拝見させていただいています。民間病院勤務の検査技師です。βラクタマーゼの産生率を大まかでよいので教えていただきたいです。菌種は淋菌, ヘモフィルス, プレボテラ, ポルフィロモナスです。当院では淋菌やヘモフィルスの (βラクタマーゼ) 産生株は非常に少ない気がします。嫌気性菌は大部分が産生するものと思っていましたが陰性も多い気がします。ニトロセフィン法を用いていますが, 検査法がおかしいのでしょうか??? ご教授お願いいたします。

【回答】
“βラクタマーゼの産生率を大まかで良いので教えていただきたいです。” 
 菌種毎の産生率の1例を示します。

 淋菌については, IASR (Infectious Agents Surveillance Report) のホームページ[http://idsc.nih.go.jp/iasr/index.html]によれば, 1980年代に一旦増加したペニシリン耐性菌がその後減少し, 1995_1998年にはペニシリン耐性率が9.7%, そのうちPPNG (penicillinase-producing Neisseria gonorroeae) が占める割合は1.5%であったとされています。その代わりニューキノロン耐性淋菌の増加が問題となってきています。

 ヘモフィルス属のインフルエンザ菌については, これもIASRのホームページからの引用ですが, 髄膜炎由来のインフルエンザ菌ではペニシリナーゼ産生菌の頻度が高く, 21%の菌株がBLPAR (β-lactamase-producing ampicillin resistant Haemophilus influenzae), 6.4%の菌株がBLPACR (β-lactamase-producing amoxicillin-clavulanate resistant Haemophilus influenzae) であったと報告されています。これに対して呼吸器感染症由来菌株におけるBLPARの占める割合は5%程度であるとされています。髄膜炎由来のインフルエンザ菌のすべてがserotype bの成績であるため, 血清型によりβ-ラクタマーゼ (ペニシリナーゼ) 産生頻度が異なる可能性もあります。ちなみに当院で分離したインフルエンザ菌のペニシリナーゼ産生頻度は, 平成13年度で6.8%, 平成17年度で4.8%と僅かに減少しています。その代わりBLNAR (β-lactamase-nonproducing ampicillin resistant Haemophilus influenzae) が増加してきています。

 嫌気性菌のβ-ラクタマーゼ産生頻度については, 「微生物検査マニュアル?臨床嫌気性菌検査マニュアル ’97 ―」 に, Bacteroides属76_100%, Prevotella属50_70%, Porphylomonas属 _30%, Fusobacterium属 _40%と記載されています。Bacteroides属に限って言えば, 大部分の菌株がβ-ラクタマーゼを産生すると言えますが, 産生頻度は菌種によって異なります。

“ニトロセフィン法を用いていますが,検査法がおかしいのでしょうか???”

 β-ラクタマーゼ産生確認試験の中でニトロセフィン法は, 他の2法 (アシドメトリー法, ヨードメトリー法) よりも感度が高く, 嫌気性菌の検査にも使用される方法ですが, 光や熱に不安定であるため, 試薬の劣化には注意する必要があります。ニトロセフィンディスクは2_8℃で保存し, 使用時には容器が室温に戻ってから開封することになっています。また精度管理用としてStaphylococcus aureus ATCC 29213 (陽性対照菌株) およびHaemophilus influenzae ATCC 10211 (陰性対照菌株) が示されていますので, 被検菌と同時にこれらの菌株のβ-ラクタマーゼを検査することによって精度が確認できると思います。

(公立玉名中央病院・永田 邦昭)


【質問者からのお礼】
 お忙しい中, ありがとうございました。試薬の保管方法も含めて, 今後業務に活かして行きたいと思います。


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