06/04/11
■ 私の鼻腔菌ってなにもの???
【質問】
 初めまして。私は薬学部に通う学生で, ●●と申します。大学2年生になり, 実習が始まって, 微生物の実習もこの間終えました。その実習で, 自分の鼻腔菌をマンニット食塩寒天培地で分離培養後, 普通寒天平板で分離培養, さらに普通寒天斜面で純培養して顕微鏡検査, コアグラーゼ産生試験, 細菌の薬剤感受性試験を行うという実習がありました。

 そこで自分の鼻腔菌を見てみますと, マンニット食塩寒天培地は黄変, コアグラーゼ産生試験も完全に固まりはしなかったものの, フィブリン塊らしき“モヤモヤしたもの”が出来, 黄色ブドウ球菌かと思いきや, 顕微鏡検査をすると“芽胞”がある・・・一体, 私の鼻腔菌は何なのでしょうか??? ちなみに薬剤感受性試験の結果はPC: 耐性, MPI: 感受性, EM: 感受性でした。

【回答】
 臨床検査で, 鼻腔粘膜から主に検出される菌種はStaphylococcus aureusです。特に医療従事者の鼻腔粘膜にはS. aureusが定着しやすいと言われていますので, 実習もS. aureusの検出を目的としていると思います。そこで, ブドウ球菌を検出する目的でマンニット食塩培地を使用しているのですが, 一つ誤解があります。マンニット食塩培地で黄色発育した集落ではS. aureusを第一に疑いますが, ブドウ球菌のグループではS. aureusのみがマンニットを分解する菌種ではありません。またマンニット食塩培地の選択力である7.5% NaCl濃度ではブドウ球菌以外の多くの菌種は発育できませんが, グラム陽性桿菌であるBacillus group, 一部のCorynebacteria group, グラム陽性球菌の腸球菌などが発育可能です。質問の内容から, 検出された菌種を推定するとBacillus 属の菌種だと思います (Bacillus属は自然界に普通に生息し, 炭疽菌を除き, 多くが非病原性です)。

 さて, 貴方が推定菌種で混乱した理由ですが, まず細菌同定の手順に誤りがあります。特定の培地 (ここではマンニット食塩寒天培地) に未知の検査材料を培養した時には目的とする特定の菌種 (ここではブドウ球菌) のみが発育するとは限りません。まずは発育してきた集落をグラム染色して形態と染色性を確認してから, 次の試験を実施すべきです。今回の場合には, マンニット食塩培地に生えた集落をグラム染色していないのが誤りです。選択培地に目的とする菌種以外が発育し, その菌種が同定できるのも細菌学の楽しい一面です。頑張って下さい。

(琉球大学・仲宗根 勇)

【質問者からのお礼】
 丁寧な対応, 有難うございました。大変勉強になりました。これからも頑張ります!!! また質問の際は宜しくお願い致します。


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