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【質問】
私は食品会社の品質管理部で微生物検査を担当しています。現在のところ,
前任者から引き継いだ方法で検査を実施しているのですが, いくつか疑問点があり,
自分なりに本やインターネットなどで調べてみたのですが, よく分からないので,
貴サイトへメールさせていただきました。
〔質問1〕
水に溶解した際pH 3〜4位となる粉末の検体および酸性を示す液体の検体の場合,
緩衝液の原液で検体を希釈していますが, この方法での分析は支障ないのでしょうか???
この原液を使用する方法について, 前任者から, “通常のリン酸緩衝食塩水では溶解しないからだ”という説明を受けましたが,
原液でも溶けない物もあり, また, 通常のリン酸緩衝食塩水でも溶けずに沈殿するほぼ中性の検体でもそのまま上澄みを検査しているので,
疑問を感じています。
〔質問2〕
大腸菌群の検査で, BGLB培地を使用しています。通常は2倍濃度に調製したBGLB培地
10 mlに, 検体を10倍希釈した物を10 ml分注しています。しかし, リン酸緩衝食塩水に溶かすと直ぐに固まってしまう検体の場合は,
太い試験管を用いて, 通常濃度に調製したBGLB培地 45 mlに直接検体 1 gramを入れています。この場合,
ブランクはリン酸緩衝食塩水を10 ml入れていますが, 検体のBGLB培地にはリン酸緩衝食塩水を9
ml加えなくてもよいのですか??? それとも加えると濃度が薄くなり過ぎてしまうのでしょうか???
〔質問3〕
リン酸緩衝食塩水を分注器で三角フラスコに入れてオートクレーブで滅菌する時のことについて分からないことがあります。シリコン栓をする前にフラスコの口の内側をキムワイプで拭かないと,
オートクレーブで滅菌した後に, シリコン栓がフラスコに吸い込まれるので, その際三角フラスコに雑菌が入りやすいとある人に言われました。しかし,
滅菌した後, 直ちに殺菌灯のついた菌検査用の実験室へ運び入れているし, フラスコの内側も目に見えるほど緩衝液が付くわけでもないし,
滅菌すればフラスコの口やシリコン栓の周りにフラスコ内の緩衝液が蒸発して付着します。またシリコン栓は真ん中がスポンジになっていて,
オートクレーブから出してもフラスコの中に引き込まれるということは考え難いと思っています。ですので,
滅菌前に拭く作業は無駄な気がするのですが, これは素人考えですか???
初歩的な質問ですが, ご回答よろしくお願いいたします。
【回答】
〔回答1〕緩衝液の原液は確かにpHの補正にはよいかもしれませんが, 微生物細胞を考えますと,
浸透圧に問題があるように思えます。pHが中性付近にない検体は, 試料調整時に少量の1N-NaOHや1N-HClなどでpH補正することが必要です。予め検体毎に必要なNaOHやHCl
溶液のpH補正量を算出しておけば, 作業がスム_ズに行われると考えます。実際の作業時には滅菌したpH補正液を使用してください。また検体は必ずしも溶解性の高いものだけではないので,
希釈液と検体を一緒にホモジネ_トした上澄みを検査しても問題はないと思います。
〔回答2〕BGLB培地45 mlの根拠がわかりません。BGLB培地は一般にダ_ラム管を入れてガス産生を検査する培地として使われています。検体を直接,
BGLB培地へ入れる時には緩衝食塩水 9 mlを加えなくてもよいと考えます。回答者も粉末検体を直接,
BGLB培地へ接種した経験がありますが, 無菌操作を含め, 非常に手間がかかりました。
〔回答3〕シリコン栓をする前にフラスコの口の内側をキムワイプで拭く作業は,
“不要”と考えます。昔は, 綿栓を自分で作り, フラスコに栓をしていました。それが今日では,
シリコン栓という便利なものがありますので, 試験される方は大変助かっていると思います。ご承知のように,
オ_トクレ_ブ滅菌は高圧蒸気滅菌ですので, 水蒸気が容器内へ入る可能性があります。このため昔は,
硫酸紙を綿栓の上から被せ, 口を麻紐で結んで滅菌していました。最近はアルミ箔を被せて滅菌するようになりました。この際は,
口元をよく“しごく”ことが重要です。
(日水製薬・小高 秀正)
【追加質問】
お忙しい中, 質問へのご回答をいただき有難うございます。中性付近にない検体の調製については,
上司と相談して新しいマニュアルを作りたいと思っています。
BGLB培地に関して追加質問をしたいので, お願いいたします。先日の質問で,
私共がBGLB培地 45 mlを使用していると申し上げました。これは×1倍濃度に調製した培地です
(私自身も何故, 45 mlずつ試験管に入れて培地を作るのか分からないまま作業をしております)。このように“×1倍濃度に調製したBGLB培地に検体を
1 gram, 直接接種する場合のBGLB培地の適量は何mlなのでしょうか???”
お教えくださいますよう, よろしくお願いいたします。
【回答】
粉末検体がどの様な物か分かりませんが, 1 gramでしたら10 mlでよいと思います。1
gramを加えることによってBGLB培地のpHが極端に変化するようでしたら, 試料
10 gramを最初に緩衝食塩水で10倍希釈し, その10 mlを90 mlのBGLB培地へ接種してもよいと考えます。しかし,
貴社のやり方がどの様な経緯で確定したのかは分かりませんが, 何か貴社の特別事情,
あるいは経験があるようにも思えます。参考までに, 日本薬局方の微生物限度試験では試料
10 gramを乳糖ブイヨンに加えて100 ml にすると記載されています。
(日水製薬・小高 秀正)
【質問者からのお礼】
お忙しい中, ご回答いただき有難うございます。1 gramに対して10 mlでよいということは,
45 mlでは多いくらいですね。緩衝液で希釈すると直ぐに固まってしまう検体のため,
希釈できないので直接接種しているのですが, この場合のみ大型の試験管を使用しています。検体を入れやすくしているのではないかと推測しています。当然ダーラム管も長いです。そのため培地の量が多くなっているのではないかと個人的には考えています。培地性能が気になっていたので,
安心しました。このサイトでいろいろ勉強させていただいていますが, つくづく自分の知識のなさを痛感します。今後もまた,
ご教授いただけますよう宜しくお願いいたします。
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