04/11/29
■ “BLNAR”の見つけ方を教えてください
【質問】
 BLNAR, low BLNAR疑い株の見つけ方を教えてください。例えばABPCのMICがいくつ以上で, CCL, CTX, CPDXなどの感受性が・・・・・の場合疑いが強い。お願いします。

【回答】
 NCCLSでは, β-lactamase 陰性で, ampicillin耐性(≧4μg/ml)のH. influenzaeを“BLNAR”と定義します。質問にあります“low BLNAR”については, NCCLSはなんら言及していません。“low BLNAR”は専ら生方らが提唱しています。BLNARでは隔壁合成酵素のPBP3遺伝子(ftsI)上に変異があり, その内の3ヶ所の変異が耐性に関与しているとされています。1ヶ所のみ変異した株では耐性レベルが低いため“low BLNAR”と呼ばれております。

 NCCLSで定義するBLNARを薬剤感受性試験から判定する場合には, NCCLSの判定基準に従えば可能です。問題は“low BLNAR”の判定方法にあります。生方らの報告によると, ampicillin のMIC値が1_4μg/mlの範囲に多くのBLNARが分布することを報告しております。NCCLSのampicillin のブレイクポイントではMIC, 1μg/mlは感性 (S) のカテゴリーに入りますので, このNCCLSの判定基準では生方らのいう“low BLNAR”は検出できないことになります。生方らは, PBP変異H. influenzae株は通常, ampicillinに≧1μg/ml, cefaclorに≧16μg/mlを示すと報告しており, 薬剤感受性試験から“low BLNAR”を検出するにはこの値を参考にできると思います。BLNARのcefaclor, cefotaxime, cefditren の感性値については, 生方らの詳細な報告がありますので, それを記載します。Cefaclor: 85%以上の株が16μg/ml以上のMIC値を示す, cefotaximeではBLNARの多くが0.063μg/mlをピークに, それ以上のMIC値を示す。それに対し感性株の多くが0.031μg/ml以下である。cefditrenでは多くが0.031μg/ml以上を示すとされています。

 質問者の施設での薬剤感受性試験の方法が記載されていませんので, 不明ですが, ディスク拡散法ではさらに識別が困難になります。上に記載したような耐性遺伝子をもつすべてのBLNAR株を, 現在の薬剤感受性試験から検出するには自ずと限界があり, 今後の検討が必要と考えます。

(琉球大学・仲宗根 勇)


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