05/02/02
■ 普通ブイヨンでの菌膜形成
【質問】
 授業で, 普通ブイヨンで細菌 (枯草菌,大腸菌,黄色ブドウ球菌,緑膿菌)を培養しました。その結果,他の細菌とは違い,枯草菌のブイヨンには液面に白い菌膜が出来ていました。それはなぜですか???

【回答】
 枯草菌 (Bacillus subtilis) は偏性好気性 (発育に酸素を必要とする) 菌種であり, 酸素のない嫌気環境では発育できません。そのため普通ブイヨンの液層表面に発育します。この特徴は, その他の病原性をもつBacillus属との鑑別にも利用されます。またB. subtilisはrough型 (粗く, ざらざらした集落) の集落を作るため, 液体培地で培養した場合には“培地の液層表面で増殖した個々の細菌細胞が引っ付きあって菌膜を形成します”。この菌膜あるいは菌塊はお互いに強力に引っ付きあっているため, 白金耳で菌膜全体をすくい取ることもできるぐらい, 強固なものです。

 緑膿菌 (Pseudomonas aeruginosa) も好気性の細菌ですので, ブイヨン表面で旺盛に発育します。しかし実験に用いたP. aeruginosaでは菌膜形成を認めていませんが, これは実験に用いたP. aeruginosaの集落の型がsmooth 型であったためと想像されます。Smooth 型は菌塊を形成することはなく, 2_3日培養すると培地表面に“粘性の膜”を形成します。Rough型のP. aeruginosa を同じように液体培地に接種して2_3日培養すると, B. subtilisよりは薄いですが菌膜を形成します。

 大腸菌 (Escherichia coli), 黄色ブドウ球菌 (Staphylococcus aureus) は通性嫌気性菌 (酸素の有無にかかわらず発育する) の菌種です。酸素の有無にかかわらず発育, 増殖しますので, 培地全体で増殖して, 液体培地の場合には増殖分裂した個々の細胞が菌塊となって試験管の管底に沈澱を作ります。

 細菌の集落形態は, 菌自体のもつ因子や, 生息する環境, 培養する培地と培養環境など, 数多くの因子で変化する場合があります。同じ菌種でも様々な集落形態があるのも細菌学の面白いところと思います。頑張って観察して下さい。

(琉球大学・仲宗根 勇)


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