05/09/14
■ キャンピロバクターの同定方法について
【質問】
 お世話になります。キャンピロバクターの同定方法について御指導下さい。私は▲▼県の検査センターで細菌検査を担当しております。

 キャンピロバクターの同定方法である馬尿酸試験と酢酸インドキシル試験を実施しようと思っているのですが, 詳細なことが分かりません。

 (1) 試薬調整方法び保存方法, 使用期限
 (2) 具体的な検査方法と判定方法

 さらに, 実用的で簡易な方法をご存知であればお教え下さい。べクトン社製の“馬尿酸塩ブロス”というのがあると聞いたのですが, 有用な商品なのでしょうか???

 また, 実際問題として消化器系から分離されたキャンピロバクターは, C. jejuni C. coli を鑑別する意義があるのでしょうか???

 また, 血液やリコールからキャンピロバクターが分離された場合の迅速で決定的な同定法は何かありますでしょうか???

ご意見を頂ければ・・・と思います。よろしくお願い致します。

【回答】
 最初に馬尿酸加水分解試験と酢酸インドキシル試験の試薬調整法と試験方法を記載致します。

〔酢酸インドキシル試験〕
・試薬の調整
(1) アセトンでindoxyly acetateの20%溶解液を作成する。
(2) 溶解液の25μlをペーパーディスク (6 mm径) に添加して室温で乾燥させる。
(3) 乾燥剤を入れた遮光容器で4℃に保存する。
(4) 調製したディスクは遮光, 乾燥の4℃で保存すれば12ヶ月は使用可能。

・試験方法
(1) 培地から菌集落をとり, ディスクに塗り, 滅菌蒸留水をピペットで1滴滴下する。
(2) 陽性の場合は5_10秒後に深青から青緑色に変化する。弱い陽性は10_30秒後に薄い青色に変化し, 陰性では30秒後でも色の変化を認めない。

〔馬尿酸塩加水分解試験〕
 菌が馬尿酸塩加水分解酵素で馬尿酸を分解し, その最終産物である安息香酸かグリシンのいずれかを測定する方法です。ここでは簡便で安価な迅速法 (グリシンの検出) を記載します。

・試薬の調整
(1) 1%馬尿酸ナトリウム水溶液を作成する (馬尿酸1 gを蒸留水100 mlに溶解)。密栓試験管に4 ml分注して?20℃で保存する。
(2) ニンヒドリン試薬を調製する (アセトン50 ml, ブタノール50 mlにニンヒドリン3.5 gを溶解する)。

・試験方法
(1) 菌集落から1%馬尿酸ナトリウム水溶液が混濁する程度に菌浮遊液を作成し, 37℃で2時間, 反応させる。
(2) ニンヒドリン試薬を0.2 ml添加して, 37℃で10分間, 反応させる。
(3) 陽性の場合は深い青紫色に変化する。陰性は変化がないか薄い紫色になる。ニンヒドリン試薬を添加後, 30分間以上反応させると, 偽陽性となるので, 注意して下さい。グリシンを検出する迅速馬尿酸試験法には, ステック法による市販品 (ヤトロン社製) もあります。この方法では10分間で結果が得られます。質問にある馬尿酸ブロス法は安息香酸を最終産物として検出する方法であり, 24_42時間の培養が必要となります。他の簡便な同定試験にはnalidixic acid とcephalothinの感受性試験があります。しかしnalidixic acid耐性株がヨーロッパで分離されていますので, 馬尿酸試験の結果が優先されます。また同定キットではAPI-Campy Systemがあります。同定キットの評価成績では, 馬尿酸陰性, nalidixic acid感性と耐性を示したC. coliの同定に有用であると結論していますが, さらに同定精度の向上のためには酢酸インドキシル試験と馬尿酸試験を併用して行うことを勧めています。

 また菌種の正確な同定は, 感染原因菌の解明, 特殊な感染症の診断, 治療指針の提案, 公衆衛生上の見地など, 細菌検査が本来広く目的とするものだと考えます。

(琉球大学・仲宗根 勇)


戻る