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【質問】
Campylobacterの発育温度について教えて下さい。C. fetusは文献には25℃で発育し,
42℃では発育しないと書かれていますが, “実際に確認するにはどのように培養すればいいの”でしょうか。使用する培地など,
培養条件がありましたら教えてください。
【回答】
Campylobacter属における発育温度試験に使用する培地は,血液寒天培地でよいと思います。製品により発育性の善し悪しはあると思いますが,純培養菌を用いて検査されるのであればCampylobacter属用の特別な培地を使用する必要はありません。培養は微好気条件
(5%O2, 10%CO2, 85%N2 )下で行います。Campylobacter属専用のガス発生袋が市販されていますので,嫌気培養に用いるジャーやタッパーに入れて使用すれば簡便に培養できます。Campylobacter属は特に乾燥を嫌いますので,培養する際にはジャーやタッパーに水を入れるか,ガーゼなどを湿らせて入れておき,湿度を保つことも大切です。以上のような条件で,2枚の血液寒天培地に接種した被検菌を一方は25℃,もう一方は42℃のフラン器に入れて培養してみてください。継代培養であれば1日で集落の確認は可能だと思われますが,2日間は観察したほうがよいと思います。
(公立玉名中央病院・永田 邦昭)
【質問者からの追加】
実は以前, 臨床微生物学会で「当院でのC. fetus検出例」という発表をした際に,
発育温度を調べる時は斜面培地??? (試験管培地) を使うのが正しいと言われたことがあり,
その方法が書いてあるという“バージーズ??? マニュアル”がないので, どなたか知っている人がいないかと思い,
聞いてみたくなったのです。職場で続きの実験をしているのですが, これでいいのかなと不安に思っています。
【追加回答】
“発育温度を調べる時は斜面培地???(試験管培地)を使うのが正しい”ということについては知りませんでしたので,
Bergy’s Manual of Systematic Bacteriology (Vol. 1) を調べてみました。版が違うのかもしれませんが,Campylobacter属の発育温度試験に使用する培地についての記載を見つけることはできませんでした。発育温度を調べる時の培地というのが,Campylobacter属に限定されたものなの否か,それとも発育温度試験,
全般的な意味であるのか疑問が残りますが,Campylobacter属については,
試験管入りの培地だと培養条件としてのガス組成を整えるのに不便であると思います。キャップを緩めにするとか,綿栓に変えるなどの通気性を保つ操作が必要になります。斜面培地ではなく,
試験管入りの半流動培地であれば,微好気性菌でも発育可能ですから、経験的に半流動培地を用いて発育温度試験を実施されている施設もあります。この方法だとガス発生袋などを使用する必要もなく,
簡便に試験することができると思います。
ご質問に沿った答えにはなっていないかもしれませんが,発育温度試験自体が菌の発育を定量的に測定するものではなく,単に発育するか否かを検査する試験ですから,十分な発育支持力のある培地を用いて検査し,一方が発育すれば,
それが陽性 (発育) 対照となりますので,25℃と42℃の培養, 両者の条件での発育を比較することで試験の目的は達するのではないかと考えます。いずれの方法で試験されるにしても,実施された条件を明記している限り,この方法ではこのような結果になりましたということを,自信を持って発表されてもよいと思います。
(公立玉名中央病院・永田 邦昭)
【質問者からのお礼】
たびたびのお返事をありがとうございます。Campylobacterの性状を考えると半流動培地を使うのがいいのかなと思いました。やってみたいと思います。いろいろ調べていただき,
ありがとうございました。
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