■ Candida albicansでの阻止円の判定 | |
【質問】
こちらのホームページは大変詳しく, 他の皆さまの質問をありがたく参考にさせて頂いています。初めて質問させていただきます。 現在, C. albicansについて目的サンプルの阻止円の直径を測定することになり, コントロールとしてフルコナゾールのディスク (手製) で試していますが, 一面に菌が増殖し, うまく測定できません (と思っています)。試しに, 販売されているディスク (Etest FLCZ) を用いても一面に菌が増殖していました。ところがメーカーに問い合わせたところ, カンジダ菌で阻止円を測定する場合は境界が見づらい場合があると指摘されました。4℃に保存していたプレートを観察したところ, 確かに菌の増殖の仕方が異なる部分があります。しかし, いろいろなwebで写真を見ると, 同じフルコナゾールの阻止円をかなりはっきりと観察できる写真も見受けられます。 (1) カンジダ菌に対する抗菌物質の阻止円は一般的に見づらいものなのでしょうか。うっすらと菌の生えている部分を阻止円と評価してよいものなのでしょうか??? そして, それはアゾール系の抗真菌薬に限ったものなのでしょうか??? (2) また, きれいな阻止円を観察するにはどのような培地を調製すればよいでしょうか??? もともと, サブローデキストロース寒天培地 (CG+) を用いていましたが, Etestの推奨の培地 (RPMI1640+MOPS) への変更を検討しています。こちらは抗生物質などを添加しないプレートなのですが, 抗生物質を入れなくても阻止円の測定に影響はないものですか??? (3) 最終的にはウェルディフュージョン法を行う予定ですが, どのような点に気をつけたらよいでしょうか??? 病院の検査部などからの質問ではないのですが, もし教えていただければと思っております。どうぞよろしくお願い致します。 【その他の条件など】
※インキュベートの条件はNCCLSなどを見ますと35℃, 24〜48時間とあるのですが, 他の実験との都合上37℃で行っていました。 【回答】
(1) 試験培地は2% ブドウ糖と0.5μg/ml のメチレン・ブルーを添加したMueller-Hinton寒天培地 (pH7.2〜7.4) を用いる。 (2) McFarland 0.5濁度の菌浮遊液 (1〜5×10^6 cells/ml) を綿棒で寒天面に塗布, 接種する。 (3) 35℃, 20〜24時間培養する。 (4) 黒を背景に反射光下に阻止円を観察, 判定する。 (5) ディスクはフルコナゾールを25μgを含有し, C. albicans ATCC 90028では阻止円の直径が28〜39 mmに判定される筈である。 質問の1: 一般に, 細菌を試験対象とするのに比べ, 酵母真菌でのディスク拡散法は判定し難いということは覚悟してください。 質問の2: 寒天培地にグルコースを入れると酵母真菌の発育が促進され, メチレン・ブルーの添加で阻止円の縁が判定し易くなります。抗菌活性を試験する培地には抗生物質をむしろ積極的に添加しません (抗生物質を除いた培地を使う)。予想しなかったフルコナゾールとクロラムフェニコールあるいはゲンタマイシンとの相互作用 (相乗あるいは拮抗作用) があるかもしれません。 質問の3: “ウェルディフュージョン法”という言葉を知りません。Well-diffusion method??? 従って回答できません。 〔参考文献〕
NCCLS/CLSI M44-S1: Zone Diameter Interpretive Standards and Corresponding Minimal Inhibitory Concentration (MIC) Interpretive Breakpoints, 2005. (琉球大学・山根 誠久)
◆「酵母真菌でのディスク拡散法は判定し難い」 ◆RPMI1640寒天培地とほぼ同じ直径の円を描いていたことから, これも実は阻止円なのではないかと思いました。 ◆「抗菌活性を試験する培地には抗生物質をむしろ積極的に添加しません (抗生物質を除いた培地を使う)」とのことですので,
今後も抗生物質を添加しないRPMI1640寒天培地で実験を行おうと思います。お忙しい中,
詳細な回答を頂きまして誠にありがとうございました。操作がまったく間違ってはいないことが推測され,
安心致しました。最後にwell diffusion method について日本語で穿孔法と呼ばれている手法のようですが,
まずはディスク法で試験を行い, 今後, 検討していこうと思います。今後ともどうぞよろしくお願い申し上げます。
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