05/04/19
■ セレウス菌の判定について
【質問】
 初めて質問させていただきます。私は食品メーカーにて微生物検査を行っておりますが, NGKGを使用したセレウス菌検査を行うとしばしば典型的コロニーと思われるもの (白色の歪なコロニー, コロニー周辺が赤変, コロニーの周りに濁ったハロー) が見受けられるのですが, 「セレウスが出ることはない。枯草菌だ」と言われてしまいました。確実な知識の元に納得したいので, 基本的な質問で申し訳ないのですが, ご返答お願いいたします。

(1) NGKGで上記のようなコロニーを形成するものとして枯草菌という可能性はあるのでしょうか??? また, セレウス以外の可能性とその識別方法を教えていただけませんでしょうか

(2) パン業界においてセレウスが出ることはそれほど突飛な事件なのでしょうか??? (小麦由来のものはありえないでしょうか)

専門的な意見をいただけたらと思います。よろしくお願いいたします。

【回答】
(1) NGKG培地にはグリシンが添加されているため, 枯草菌の発育は抑制される傾向にあるため, 枯草菌の可能性は低いと考えられます。セレウス以外の可能性としては, Bacillus thuringiensisが考えられます。セレウスとB. thuringiensisは非常に似ていますが, B. thuringiensisは結晶タンパクを形成します。

(2)セレウスの生息箇所は土壌ですから, セレウスがでることはそんなに珍しいことではありません。セレウスはサラダあるいは調理パンから6_74%の率で検出されています。食品一般におけるセレウスの汚染菌量は、10_10^3 CFU/gramの範囲にあることが知られています。セレウスは食中毒の原因菌としてあるいは食品の腐敗や変敗の原因になるため重要です。以上のように, 製造過程あるいは原料からセレウスが検出されたら, 最終製品にも付着する可能性があると考えられます。なるべく早く, セレウスの汚染原因を追究して, セレウスが存在しない環境下で食品を製造することをお勧めします。

 上記の回答は防菌防黴学雑誌Vol. 30 (8): 511〜524, 2002に女子栄養大学の上田先生が書かれたものを参考にしました。

(日水製薬・小高 秀正)

[戻る]