05/10/12
05/11/04
■ 腸炎ビブリオの確定試験について
【質問】
 よく「質問箱」を参考にさせて頂いています。腸炎ビブリオの確定試験に関する質問です。下記の確定試験を実施することで, “腸炎ビブリオ”の判定が可能でしょうか???

・試験方法
 TSI培地, LIM培地, VPテスト, 尿素寒天, 食塩培地 (0, 3, 6, 8, 10% NaCl)

・判定結果
 TSI培地: K/A, motile (+), VPテスト: (−), 尿素試験: (variable), 食塩 (0, 3, 6, 8, 10% NaCl): (−, +, +, +, −)

 宜しくお願い致します。

【回答】
 検査される対象が, 糞便か, 食品あるいは環境由来の材料であるのかが不明ですが,主にヒトに病原性を示すビブリオ属の鑑別について回答します。

 腸炎ビブリオの検査はまず, TCBS培地やビブリオ寒天といった選択培地で白糖非分解性集落を形成する菌を釣菌し,オキシダーゼ陽性のグラム陰性桿菌であった場合に以後の確認試験を実施します。ご質問の確認試験の内容で“病原性ビブリオ”の中での鑑別は可能かと思いますが,文献的にはこれらに加えてアルギニン加水分解とオルニチン脱炭酸試験などが記載されているものが多いようです。ただし好塩性菌で至適食塩濃度が3%であることから,食塩要求性や食塩耐性試験を除いた性状試験はすべて1〜3%の食塩添加培地で行うことが勧められています。菌株にもよると思いますが,1〜3%の食塩を添加しなかった場合には反応が弱いか,偽陰性に判定されてしまう試験もでてくる可能性があると考えられます。参考までに腸炎ビブリオの性状を記載します。

  • TSI 寒天培地: ブドウ糖分解,ブドウ糖からのガス産生性陰性,乳糖非分解,白糖非分解,硫化水素非産生
  • LIM寒天培地: リジン脱炭酸陽性,インドール試験陽性,運動性陽性
  • アルギニン培地: アルギニン加水分解陰性
  • オルニチン培地: オルニチン脱炭酸陽性
  • VP半流動培地: VP試験陰性
  • 無塩ペプトン水: 非発育
  • 3%食塩添加ペプトン水: 発育
  • 8%食塩添加ペプトン水: 発育
  • 10%食塩添加ペプトン水: 非発育
(公立玉名中央病院・永田邦昭)


【質問者からのお礼】
 ご連絡が遅くなりましたが, 丁寧な解説をありがとうございました。自主検査では, 確認試験まではあまり実施しないため, 大変参考になりました。


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