05/03/15
■ 腸炎ビブリオの保存培地
【質問】
 私は○×検疫所で微生物検査を担当しています。質問箱を拝見させていただき, いつも大変勉強になっています。ひとつ教えていただきたいことがあります。

腸炎ビブリオ菌などを保存するときの培地で, 海水を濾過した後, 滅菌をして, この滅菌した海水とカンテンを混合させて作る培地があると聞きました。その培地に関してご存知でしたら教えてください。また, 参考文献がありましたらそちらも教えてください。よろしくお願いします。

【回答】
 回答者も聞いたことがありますが, ご質問の保存培地について調べてみましたが論文は見つかりませんでした。また, “タコ”を細かく切り, 3%NaClを含む培地に入れ, 滅菌後, 保存培地として使うということも聞いたことがあります。いずれも経験の話で, それだけ腸炎ビブリオの保存に多くの方々が苦労していることと考えられます。腸炎ビブリオ[藤野恒三朗, 福見秀雄編集, 一成堂, 1964年] の免疫学的研究 (大城俊彦) 〔5. 酸凝集反応所見によって規正された菌株のR化防止保存法〕の中で, 海水に各濃度のペプトンを添加した寒天培地と3%NaCl, 1%ポリペプトン, 0.5%肉エキスを加えた寒天培地における菌株のR化を検討したところ, 海水に0.1%_0.4%ポリペプトンを加えた培地で14代継代培養しても変異は認められなかったが, 後者の培地ではR化したと書かれています。海水の代わりに3%NaCl水を用いても同等の成績が得られたとも書かれています。これらの検討より, 菌株保存用培地として, 0.3%ポリペプトン, 3%NaCl, 0.4%粉末寒天 (pH 6.8) の軟寒天培地の高層を用いて, スム_ズ型コロニ_を穿刺培養し, 滅菌流動パラフィンを重層すると書かれています。追加ですが, DIFCO社からMarine Agar 2216やMarine Broth 2216という培地が発売されています。さらに, 独立行政法人国立環境研究所のホ_ムペ_ジ[http://www.nies.go.jp]の保存株の培養についての中に強化海水培地の作り方がありますのでご参照ください。

(日水製薬・小高 秀正)


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