05/04/21
Clostridium difficile トキシンBの検出
【質問】
 初めて質問させていただきます。山形県の○×病院臨床検査室の臨床検査技師です。表題の件につきましてご教示ください。

 現在, 日本では一般的にClostridium difficileのトキシンはトキシンAの検出がほとんどと聞いております (検査法的に)。しかし最近トキシンA−/B+が問題になりつつあり, 実際に当院でも外科の医師から「CDトキシンは陰性だが, 内視鏡検査では明らかに偽膜性大腸炎という症例があったよ」と報告をうけました。CDトキシンBを検出することは日本では可能でしょうか??? (要はトキシンA−/B+を捕らえる検査法の有無です)。当院が委託している外注先では無理とのことでした。聞くところによりますと, 欧米ではトキシンBも捕らえられると聞いています。ご多忙中とは存じますが, なにとぞ宜しくお願いいたします。

【回答】
 ご質問のように, Clostridium difficileの病原性には2種類の毒素, toxin Aとtoxin Bが大きな役割を演じています。現在, 日本では2種類のtoxin A検出キットが利用できますが, toxin Aとtoxin Bを両方検出するキットはまだ保険適応になっていません。ご指摘のとおりtoxin A陰性/toxin B陽性菌株の臨床分離が少なくなく, toxin A陽性/toxin B陽性株と同様に, 重篤な病態を引き起こしうることから, toxin Aとtoxin Bを両方検出するキットの輸入が強く望まれています。一方, C. difficile感染症自体に関心のない医師や検査室が多いことも事実で (C. difficile感染症に関しては開発途上国の), 日本に検査キットを輸入して, はたしてどれだけ売れるのかしらというのが輸入を考えている輸入代理店の本心かと思います。

 現在, 日本でtoxin Bの検出は可能か???というご質問ですが, 検査室レベルの話でなければ, 可能は可能です。まず, toxin Bはベロ細胞などの細胞に対して細胞毒性が高いので細胞培養法によって検出できます。Toxin Aキットが開発される前は, 糞便検体中の毒素検出は細胞培養法で行われ, 抗toxin B抗体による中和試験が行われていました。いまだに細胞培養法は特異度, 感受性ともに高いために, 糞便中の毒素検出のgold standardですが, まったく実際的ではありません。分離されたC. difficileがtoxin Bを産生するかどうかを同定するのは, サーマルサイクラーなどが利用でき, PCRが可能であれば, PCRによるtoxin B遺伝子検出が便利です。プライマーや実験条件については,[J. Clin. Microbiol. 36: 2178〜2182. 1998]の論文を参照していただくか, 国立感染症研究所 細菌第二部 加藤 (TEL 042-561-0771)までお問い合わせください。

(国立感染研・加藤 はる)

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