06/03/28
06/04/11
Clostridium difficile の嫌気性について
【質問】
 大学研究室でC. difficileを扱う動物実験を行っているのですが, 菌数のカウントが液体培地 (BHI) の濁りなどから予想するものより非常に低く出るので正確に数えられているのか分からずに困っています。そこで質問なのですが;

(1) C. difficileの増殖形細胞は嫌気性ということですが, 空気に曝すとどのくらいの時間で死滅してしまうのでしょうか??? また, 菌数カウントの希釈用に生理食塩水で10倍系列で希釈するようなことも死滅させる原因になるのでしょうか??? (その時に既に芽胞が形成されていれば, 芽胞は生き残るのでしょうが・・・)

(2) C. difficileの増殖形細胞が芽胞を形成するまでには, どのくらいの時間が必要なのでしょうか (芽胞が発芽増殖するには12〜24時間かかると書かれている論文は見つけたのですが, 逆に芽胞を形成するのに必要な時間ついては見つけられなかったため)。

どんなことでも結構ですので, お教えいただけるととても嬉しいです。宜しくお願い致します。

【回答】
 (1) C. difficileはどのくらいの時間, 酸素に暴露されると死滅するかというご質問ですが, どのような状態においてなのかに左右されるかと思います。回答者は芽胞の研究をしている訳ではないので, 経験的なお答えしかできませんが, たとえばE-testや微量液体希釈法でMICを測定する際に, 接種する菌液を (使用する液体培地を予備還元しておき, 手早く作業を行っても) 好気性菌で測定するときよりもかなり高い濁度に調整しないとうまく測定できません。Escherichia coliなどの好気性菌と同様には, 濁度から菌数の概算ができないので, 実際の実験条件で濁度と菌量の関係をご自分で確認しておくことが必要かと存じます。寒天平板上では, ブルセラHK寒天培地や変法GAM培地のような非選択培地では芽胞を形成しますが, CCMA培地やCCFA培地のような選択培地上では芽胞形成がされにくいことがわかっています。ついでですが, 非選択培地の同一培地上に少し異なった性状のコロニーが2種類認められることがよくあります。透明なコロニーと不透明なコロニーをそれぞれグラム染色してみてください。不透明なコロニーの方により多くの芽胞が認められることがわかると思います。

 (2) 手持ちのC. difficileに関する本によると, “寒天培地上のsporulation (芽胞形成) は培養72時間後のstationary phase (静止期) で認められる”とされています。経験的には, 前述の非選択培地上で48時間培養のコロニーにおいてグラム染色をしますと, (菌株による差はありますが) 通常, 芽胞形成が認められます。

(国立感染研・加藤 はる)


【質問者からのお礼】
 お返事有難うございました。大変, 参考になりました。


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