06/08/02
■ ウェルシュ菌について
【質問】
「ウェルシュ菌は致死毒素の産生性からA〜Eの五つの毒素型に分類される」とのことですが, 〔α毒素産生ウェルシュ菌〕=〔A型菌〕=〔エンテロトキシン産生菌〕と考えてよいのでしょうか??? また, ウェルシュ菌以外のレチシナーゼ産生菌との鑑別としてα抗毒素試験があったのですが, レチシナーゼはα毒素以外にどのようなものがあるのでしょうか??? ここら辺の情報がきれいにまとまった図などが欲しいのですが, なくて困っています。学生に説明するので, 分かりやすく教えてもらえると幸いです。

【回答】
 C. perfringens (ウェルシュ菌)は, α, β, ε, ιの致死毒素の産生性からA〜Eの五つの毒素型に分類されます。C. perfringens A型はα毒素のみを産生します。その他の毒素型の株はα毒素に加え, α毒素以外の3つの毒素のうちのいずれか1〜2種の毒素を産生します。人の感染症を起こすC. perfringensはほとんどがA型です。また, C. perfringens A型のほとんどの株はエンテロトキシン産生株です。C. perfringensのα毒素は, レシチンをホスホリールコリンとジグリセリドに分解する働きのある酵素で, レシチナーゼとも呼ばれます。C. perfringensのα毒素を用いて作成した抗体がC. perfringnesのα抗毒素です。 C. perfringnesのα抗毒素は, 当然ですがC. perfringensのα毒素を完全に中和することができます (完全中和)。さて, C. perfringensのα毒素と同じ作用を示すレシチナーゼを産生するClostridiaは, C. perfringens以外にもいくつか存在します。C. sordelliiC. bifermentansがそうです。C. perfringensのα抗毒素は, これらの菌種の産生するC. perfringensのα毒素と同じような作用をする”レシチナーゼの酵素活性を完全には中和できないのです (不完全中和)。C. perfringensのα毒素と働きは同じでも抗原性が異なるためです。

(岐阜大学・渡邉 邦友)


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