■ 下痢原性大腸菌の“clump formation” | |
【質問】
こんにちは。社会人大学院生でもある臨床検査技師の■■と申します。 現在「下痢原性大腸菌」の研究をしており, EAggECに関して“clump形成”を調べています。ところがclumpそのものがどのようなメカニズムで形成されるのか, いろいろ調べてみたのですが, はっきりとした答えが得られていません。clump formationについて教えてください。よろしくお願いいたします。 【回答】
さて, ご質問の「EAggECに関して, clumpそのものがどのようなメカニズムで形成されるのか」について端的にお答えすれば,「よくわかりません」ということです。 そもそも“clump-formation”とは, “Nonspecific agglutination or clumping together of bacterial cells as the result of physical-chemical factors”と定義されます。一般的には, 細菌細胞がその抗原とそれに対する抗血清中の凝集素との特異的な結合の結果, 塊状に凝集する反応のことをいいますが, 他にも物理化学的な作用によって, この反応が起きることが知られています。例えば, 脂質が自己凝集する性質などです。自己凝集というメカニズムが組み込まれていることで, 脂質膜胞の内部は明瞭な部分系として存在することが出来るのです。もし脂質が自己凝集せずに, 生体内で連続的な濃度勾配を形成していたとしたら大変ですね。 さて, EAggECの“clump形成”については, 多方面からの研究成果が集積されてきているかと思います。特に, IV型束形成性線毛に関する研究については, 下記の文献 (1) が参考になるでしょう。また, 菌種は異なりますが, 下記の文献 (2), (3) および (4) も理解の助けになる情報が含まれていると思います。これらを参考に, ご自身で勉強して下さい。 〔参考文献〕
(2) Park HS, Wolfgang M, Koomey M: Modification of type IV pilus-associated epithelial cell adherence and multicellular behavior by the PilU protein of Neisseria gonorrhoeae. Infect Immun. 70 (7) : 3891〜3903, 2002. (3) Winther-Larsen HC, Hegge FT, Wolfgang M, Hayes SF, van Putten JP, Koomey M: Neisseria gonorrhoeae PilV, a type IV pilus-associated protein essential to human epithelial cell adherence. Proc Natl Acad Sci U S A. 98 (26): 15276〜15281, 2001. (4) Wolfgang M, van Putten JP, Hayes SF, Koomey M: The comP locus of Neisseria gonorrhoeae encodes a type IV prepilin that is dispensable for pilus biogenesis but essential for natural transformation. Mol Microbiol. 31 (5): 1345〜1357, 1999. (信州大学・川上 由行)
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