06/01/30
■ コリネバクテリウム属の同定
【質問】
 私は, 医薬・医療用具の会社で環境浮遊菌と製品のバイオバ−デン菌を同定試験をしているものです。

 文献より, 環境から検出頻度の高い無芽胞桿菌にCorynebacterium属があるのですが, 非運動, 非抗酸菌, カラタ−ゼ陽性以外に同定のポイントがあれば教えていただきたいと思っております。また, 細胞の形態が多形成 (性?)とあるのですが, どのような形なのかよくわかりません。写真などがありましたら見せていただきたいのですが。

【回答】
 Coryneform bacteriaを同定するためには, グラム染色による形態が重要で, 類以菌種であるTuricella, Dermabacterは染色形態だけで区別できます。Corynebacteria属の典型的な染色形態は, グラム陽性桿菌で柵状配列 (桿菌を横に並べた状態) や, V字状配列または松葉状配列とも表現されます。グラム染色像を添付致しますので参考にして下さい。

 同定のポイント: 形態学的にCorynebacteria属が推定された場合には, 集落の大きさ, 色調 (光沢がない白_淡黄色), 溶血性 (一部の菌種を除き, 非溶血性), カタラーゼ反応を実施します。試験管法で同定を実施する場合には, glucose, maltose, sucrose, mannitol, xyloseの発酵または酸化反応 (CTA培地を用いる), CAMP 試験 (Staphylococcus aureus ATCC25923株を用いると反応が明瞭です), 運動性試験を実施します。これらの方法で, 数種類の菌種同定は可能ですが, 詳細な菌種同定は市販同定キット (API Coryne) で菌種同定が簡便に可能です。また, 1% Tween 80添加血液寒天培地と無添加の血液寒天培地での発育性で, 添加培地のみ発育する菌種はlipophilic corynebacteriaと推定する簡便な方法もあります。

(琉球大学・仲宗根 勇)

戻る