06/10/30
■ クリプトコッカスの莢膜
【質問】
 髄液などからクリプトコッカスを検出する際の“検体処理方法”について教えていただきたいのですが。通常, 髄液の細菌検査を行う場合は数ml以上あれば3,000 r.p.m.での遠心沈査を用いて検査すると思います。しかし, 3,000 r.p.m.の遠心ではクリプトコッカスの莢膜が脱落するという話を聞きました。クリプトコッカスの検出も含め, 髄液の正しい検体処理方法について教えていただきたいと思います。

【回答】
 細菌検査を目的とする場合には, 検体量は少なくても0.5 ml以上必要です (量的には多い方がよい)。1.0 ml以上ある場合には最小限1,500×g 15分間遠心して濃縮する。遠心沈渣0.5 mlを残し, 完全に混和して染色, 培養を実施する。上澄みは他の化学的検査に用いる。

以上がManual of Clinical Microbiology に記載されている髄液の前処理法です。

 “3,000 rpmでは莢膜が脱落する”という点ですが, 高速遠心による莢膜の脱落は経験したことがありません。本当に3,000 rpmで莢膜が脱落するのでしょうか。実際にCryptococcus neofrmans菌液を遠心前, 3,000 rpm, 15分間(1,000×g), 15,000 rpm (10,000×g) 10分間で遠心した菌液の墨汁染色を添付します。いずれの遠心条件でも莢膜は保持されています。また上記のASM Manualの1,500×g を得るには, 遠心器のローター半径にもよりますが, 多くの卓上型遠心器では3,000 rpm以上必要となります。これらのことから, 質問の3,000 rpm, 15分間の遠心操作による莢膜の脱落はないと考えます。
 

(遠心前) 

(3,000 rpm, 15分間)

(15,000 rpm 10分間) 

(琉球大学・仲宗根 勇)

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