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【質問】
はじめまして。臨床検査技師の■■と申します。基本的なことなのですが,
大腸菌の血清反応について教えて頂きたく質問しました。
普通寒天培地から生菌をO157の単味血清に当てたところ凝集がきたので,
加熱処理してからあてたら凝集がきませんでした。O抗原はK抗原に覆われているとのことですが,
“加熱処理後の死菌で凝集がこなければO157は完全に否定してもよいですか???”
基本的には加熱処理してからあてないといけないのは承知しておりますが, 当院で生菌であてています。説明書には生菌で凝集がきても,
死菌でこなかったり, またその逆もあるとあったのですが, 血清反応は確実に加熱処理してからでないとしてはならないのでしょうか???
【回答】
大腸菌の免疫血清は, 確実に加熱菌で使用することが大切です。理由はご指摘のとおり,
大腸菌のO抗原はK抗原に覆われているため, O血清 (抗体) とK抗原が非特異的に反応してしまう可能性があるからです。つまり今回の場合は,
被検菌株のK抗原とO157の血清中に含まれる抗体の一部が反応したために, 「生菌では凝集があったが,
加熱菌ではこなかった」という結果になったものと推測されます。この場合, O157は否定してかまいません。O抗原は加熱処理によって壊れることはありません。また逆に,
K抗原が完全にO抗原を覆ってしまっている場合などでは,「生菌ではこないが,
加熱菌では凝集した」という結果が同じ理由から起こりえます。さらにO157の血清は他の菌種
(サルモネラの一部など) とも交差反応することがわかっていますので, 必ず生化学的性状を確認した上で,
混合血清, 単味血清の順に検査を進めることも大切です。
大腸菌は血清型も多いため, このような反応がしばしば見受けられますが,
加熱処理を確実に行うことによって,「結果に迷う」頻度は減少すると思われます。
(デンカ生研・星 綾香)
【質問者からのお礼】
大腸菌の血清反応について丁寧にわかりやすく回答して頂きありがとうございました。これからは教えていただいた通り,
きちんと加熱処理したもので血清反応したいと思います。本当にありがとうございました。
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