04/09/09
04/09/13
■ 大腸菌群の濃度が一般細菌より高い???
【質問】
 私は洋菓子メーカーで品質管理をしております。検査は一般細菌, 大腸菌・大腸菌群, 黄色ブドウ球菌, サルモネラ菌, 真菌, 乳酸菌を検査しております。

 ところで質問なのですが, “一般細菌より大腸菌群の方が多く検出されることはあるのでしょうか”??? ちなみに一般細菌は栄研の標準寒天培地, 大腸菌・大腸菌群は栄研のESコリマーク寒天培地で混釈培養しております。また大腸菌群の培地にかなり薄いピンクのコロニーができたり, 培地全体が薄くピンク色になったりすることもあり, “どこまでをカウントするのか判定に困っております”。初歩的な質問ですが教えてください。よろしくお願いいたします。

【回答】
(1) 一般細菌より大腸菌群の方が多く検出されることはあるのでしょうか???

 今回の質問は, 同一希釈段階の標準寒天平板とESコリマーク寒天平板上の集落数の差異とすれば, 単独の菌に汚染されていた場合には, 集落数を測定できる範囲内 (30〜300 CFU/平板) での差はおこる可能性はあります。

(2) どこまでをカウントするのか判定に困っております。

 ピンク色になった集落はすべてカウントします。発色の弱いものについては, 培養時間を24時間まで延長して確認してください。時間の経過とともに発色は強くなります。また必要に応じて釣菌して, 新しいESコリマーク寒天平板やESコリブルー培地 (液体培地) などの合成酵素基質培地に接種して発育, 発色の有無を確認します。できればグラム染色を行い, グラム陰性の桿菌であることを確認することをお勧めいたします。

 培地の色が付いてしまう問題は, 試料 (発酵乳やヨーグルトなど) 中にβ-ガラクトシダーゼがあれば, 培地中の合成酵素基質を分解して培地がピンク色になります。また魚介類 (特に貝類) にはβ-グルクロニダーゼがありますので, 培地を青色にします。このため, 使用に当たっては, あらかじめ検体からの影響をご確認して頂ければ幸いです。

 ESコリマーク寒天培地は, 乳糖分解酵素であるβ-ガラクトシダーゼを大腸菌群の指標とし, またβ-グルクロニダーゼを大腸菌の指標として, これらの細菌を同一平板上で検出します。機構は, ラウリル硫酸ナトリウムを選択剤としたグラム陰性菌の選択培地にβ-ガラクトシダーゼに反応する合成酵素基質 (MAGENTA-GAL) と, β-グルクロニダーゼに反応する合成酵素基質 (X-GLUC) を添加してあることで, 本培地に菌が発育して, これらの酵素を産生すると, 合成酵素基質に反応し, 大腸菌以外の大腸菌群はピンクから赤紫色の集落を, 大腸菌は青から青紫の集落をそれぞれ形成します。また培地組成にピルビン酸ナトリウムを添加することで細菌の発育が良い培地になっています。

(栄研器材・柳沼 健史)

【質問者からのお礼】
 1人だけの部署なので, 質問できる人もいなく困っておりました。大変勉強になりました。これからわからないことがあったら, また質問させていただきたいと思います。ありがとうございました。


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