05/06/29
05/06/30
■ 大腸菌O抗原と培地組成
【質問】
 はじめまして。▲▼大学技術専門職員の○×と申します。現在, ある実験を行うためにいくつかの大腸菌 (O18, O2, O44, 0112ac) をモデルに用い, これらに反応する市販の抗体 (モノクローナル抗体) を試していますが, 反応するはずのいくつかの抗体が結合せずに困っています (O2, O44, 0112ac株は正規の分与機関から分与していただいたものです)。ただ単に抗体が不良だったのか, もしくは菌の抗原に何か影響があったのか・・・そこで教えていただきたいのですが, 菌の培地の組成によって抗原の発現に影響が出ることはありますか??? ちなみに培地 (液体) はポリペプトン10 g, yeast extract 2 g, MgSO4・7H2O 1 g/L (pH 7.0) を使用しています (NaClが入っていないのも気になっています)。いくつか本でも探してみましたが, 適当な内容が見つからず, こちらにまずメールをしてみました。お忙しいところ申し訳ありませんが, “抗原と培地の関係”について教えていただけると助かります。よろしくお願いいたします。

【回答】
(1) お問い合わせのO18・O2・O44・O112acモノクローナル抗体は弊社製品ではありませんので, 抗体の反応性については分かりません。一般に大腸菌は菌体抗原O・莢膜抗原K・鞭毛抗原Hの存在が知られています。K抗原はO抗原を覆っているため, O抗原の試験を行う場合にはK抗原を121℃, 15分間または100℃, 60分間の加熱処理を行い, K抗原を除く必要があります。御質問の場合も, このような加熱処理によってO抗原の反応性が見られるようになると思われます。なお, 加熱処理した後, 遠心して上清を捨て, 沈渣に生理食塩液を加えて濃厚な菌体浮遊液を抗原として使用してください。

(2) 培地の影響について
 御質問の培地成分は, 特に選択性のない培地と思われますので, 培地の影響から抗原・抗体反応が直接阻害されることはないと思います。選択性の高い培地を使った場合には非特異的反応が起きることがあります。
 

【質問者からのお礼】
 お忙しい中, お返事をいただきありがとうございました。根本的なこと (「K抗原はO抗原を覆っている」) を見落としていたわけですね。大変助かりました。ありがとうございました。
 

(デンカ生研・青木 智)

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