■ デゾキシコレート寒天培地の組成について | |
【質問】
▲▼大学の生物工学科に通う学生です。学校でデゾキシコレート寒天培地を用いて大腸菌群の検出の実験を行い, そのレポート作成のためにデゾキシコレート寒天培地の成分を調べているのですが, 私の調べた資料にはDHL (desoxycholate-hydrogensulfide-lactose) 寒天培地とばかり書かれています。このふたつは同じものなのでしょうか??? また, DHL寒天培地につきましても, 資料により異なった成分 (以下のふたつの組成)が記載されていて, 決定できずにいます。同じ名前の培地でも, 異なる成分だということはありえるのでしょうか??? 長々とした文章になってしまい, またレポートのための質問で申し訳ありませんが, ご返答いただけたらと思いメールしました。よろしくお願いいたします。 最初に, デゾキシコレート寒天培地 (DC) とDHL (Desoxycholate Hydrogen sulfide Lactose) 寒天培地について説明します。“両培地は別の培地”で, DHL寒天培地はデゾキシコレート寒天培地の変法培地で, 坂崎ら (1960年) が腸内細菌, 特にSalmonella、Shigellaの検出のために考案した培地です。両者の性能上の大きな差異は, 含まれる糖の種類で, 前者は乳糖のみ, 後者は乳糖と白糖を含み, 前者は主として食品検査などにおける大腸菌群の検査に, 後者は臨床検査におけるSalmonella、Shigellaの検査に用いられます。 表に示された組成AおよびBは, 両者共にDHL寒天培地で, デゾキシコレート寒天培地ではありませんのでご注意ください。 また培地処方の表示については, どこまで詳しく書くかによって異なり, 一例を示すと, 組成Aではペプトン 20 gとありますが, 組成Bでは, ペプトン 10 g, カゼイン酸加水分解物 5 g, 獣肉ペプトン 5 gの計20 gがこれに相当します。また糖についても, 白糖, 蔗糖, しょ糖, スクロース, シュークロースなどはすべて同義語です。培地素材や各種培地について記載されている「新細菌培地学講座」坂崎利一著 (近代出版) を一読されることをお勧めします。 なおデゾキシコレート寒天培地のオリジナル処方は, ペプトン 10 g, 乳糖 10 g, 塩化ナトリウム 5 g, リン酸一水素カリウム 2 g, クエン酸鉄 1 g, クエン酸ナトリウム 1 g, デゾキシコール酸ナトリウム 1 g, 寒天 15 g, ニュートラルレッド 60 mg, pH 7.3となっており, 現在市販されている培地ではニュートラルレッド量が30 mg前後に減量されています。 (日水製薬・三品 正俊)
【質問者からのお礼】
今, メールを見させていただきました。非常に詳しく丁寧な説明をしていただきとても参考になりました。ありがとうございます。 |