04/12/20
■ デゾキシコレート寒天培地の組成について
【質問】
 ▲▼大学の生物工学科に通う学生です。学校でデゾキシコレート寒天培地を用いて大腸菌群の検出の実験を行い, そのレポート作成のためにデゾキシコレート寒天培地の成分を調べているのですが, 私の調べた資料にはDHL (desoxycholate-hydrogensulfide-lactose) 寒天培地とばかり書かれています。このふたつは同じものなのでしょうか???

 また, DHL寒天培地につきましても, 資料により異なった成分 (以下のふたつの組成)が記載されていて, 決定できずにいます。同じ名前の培地でも, 異なる成分だということはありえるのでしょうか???

 長々とした文章になってしまい, またレポートのための質問で申し訳ありませんが, ご返答いただけたらと思いメールしました。よろしくお願いいたします。

【回答】
 最初に, デゾキシコレート寒天培地 (DC) とDHL (Desoxycholate Hydrogen sulfide Lactose) 寒天培地について説明します。“両培地は別の培地”で, DHL寒天培地はデゾキシコレート寒天培地の変法培地で, 坂崎ら (1960年) が腸内細菌, 特にSalmonellaShigellaの検出のために考案した培地です。両者の性能上の大きな差異は, 含まれる糖の種類で, 前者は乳糖のみ, 後者は乳糖と白糖を含み, 前者は主として食品検査などにおける大腸菌群の検査に, 後者は臨床検査におけるSalmonellaShigellaの検査に用いられます。

表に示された組成AおよびBは, 両者共にDHL寒天培地で, デゾキシコレート寒天培地ではありませんのでご注意ください。

 また培地処方の表示については, どこまで詳しく書くかによって異なり, 一例を示すと, 組成Aではペプトン 20 gとありますが, 組成Bでは, ペプトン 10 g, カゼイン酸加水分解物 5 g, 獣肉ペプトン 5 gの計20 gがこれに相当します。また糖についても, 白糖, 蔗糖, しょ糖, スクロース, シュークロースなどはすべて同義語です。培地素材や各種培地について記載されている「新細菌培地学講座」坂崎利一著 (近代出版) を一読されることをお勧めします。

 なおデゾキシコレート寒天培地のオリジナル処方は, ペプトン 10 g, 乳糖 10 g, 塩化ナトリウム 5 g, リン酸一水素カリウム 2 g, クエン酸鉄 1 g, クエン酸ナトリウム 1 g, デゾキシコール酸ナトリウム 1 g, 寒天 15 g, ニュートラルレッド 60 mg, pH 7.3となっており, 現在市販されている培地ではニュートラルレッド量が30 mg前後に減量されています。

(日水製薬・三品 正俊)
【質問者からのお礼】
 今, メールを見させていただきました。非常に詳しく丁寧な説明をしていただきとても参考になりました。ありがとうございます。

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