■ “Desulfovibrio”ってどんな菌 | |
【質問】
私は●●県の■■協同病院に勤務する臨床検査技師です。以前にも何度か利用させていただきました。いつも的確なお答えでとても役に立っております。また質問させてください。 血液検体で, Desulfovibrio sp.が検出されたのですが, この菌はどのような菌なのでしょうか??? 患者さんは訪問看護中でたまに入院して来ます。口唇にはヘルペスがあるようです。グラム染色では大きな螺旋状の陰性桿菌でした。調べてはみましたが, 英語の論文が多く今ひとつ分かりません。硫酸を分解する菌だとか, 磁石を作る菌だとか書いてあるようですが??? 英語を訳せる人もいない為, 宜しくお願いたします。お忙しいところ, 誠に申し訳ありません 【回答】
Desulfovibrio属をはじめとする硫酸還元菌は自然環境に存在し, 金属のパイプライン腐食の原因となったりしますが, 下水処理システムに活用されたり, ウランやクロムなどの有害金属の除去に利用する研究も進められているようです。ご質問の中にある“磁石を作る菌”というのは, 磁性細菌と呼ばれるDesulfovibrio magneticusだと思います。 Desulfovibrio属の人への感染は, 1977年に免疫応答が正常な男性の菌血症より分離報告されたのが最初であり, その他15例ほど報告があるようですが, 種のレベルまで同定されているのはわずかで, Desulfovibrio desulfuricans およびDesulfovibrio fairfieldensisが菌血症, Desulfovibrio vulgalis が腹腔内感染に関与したという報告があります。また, D. desulfuricans は犬の菌血症の報告例もあります。近年の同定技術, 特に分子生物学的な手法の進歩に伴って, 今後人の感染症からの分離報告例が増加し, 本菌属の病原的意義付けが明らかになってくるのではないかと考えられます。 今回の症例はおそらく本邦初例であり, ぜひ学会発表や論文投稿をされて, この菌の存在を多くの人, 特に臨床細菌学に携わる人に知らせてあげて下さい。特徴的な形態もしているようなので, 顕微鏡写真も添えて紹介していただければ, 不明のまま隠れていた症例が表に出てくるかも知れません。 (公立玉名中央病院・永田 邦昭) |