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【質問】
はじめまして。私は検査室で細菌検査を担当しております。今回ご質問させていただきたいことは,
嫌気性菌の感受性試験についてです。NCCLSでは嫌気性菌の感受性検査でKB法は推奨されておりませんが,
私どもの検査室では微量液体希釈法の機器がない為, KB法で実施し, 参考値として報告しております。先日,
Drから「学会発表に嫌気性菌の感受性結果を使うのは無理か」と質問されました。一応,
NCCLSで推奨されていない旨を伝えたところ, とても残念がっていました。やはり“KB法での結果を学会で発表することは止めておいたほうがいい”のでしょうか???
【回答】
嫌気性菌の感受性試験としてのディスク拡散法は, 菌の発育速度や薬剤によって寒天平板希釈法によるMIC値との相関がよくないということでNCCLSは推奨していません。しかしながら,
日常検査において, 主に経済性と簡便性の点から, 嫌気性菌についても便宜的にKBディスクによる薬剤感受性試験を実施しているという話は時々耳にします。結果については,
ご質問者のように参考ということで提示されていることが多いようです。個人的な意見ですが,
日常検査において嫌気性菌の薬剤感受性が必要となった場合, Bacteroides
fragilis groupなど, 比較的早い菌発育の嫌気性菌については, 施設の事情から,
便宜的にクリンダマイシンなどの特定の薬剤についてKBディスクなど, ディスク拡散法の結果を参考データとして臨床に返されることについては,
恐らく実際上問題はないと考えます。同様の観点から, 同じ方法で出された同一施設内におけるB.
fragilis groupなどに関する薬剤感受性結果をまとめ, これらの菌種における院内の薬剤感受性パターンを把握しておくことは無駄ではないと考えます。しかしながら,
学会発表で対外的にその結果を提示する際には, 当然ながら, 結果の妥当性について問われる可能性があることは避けられません。従って,
学会で発表されるのであれば, NCCLSで推奨されている方法で改めて対象株の薬剤感受性測定を実施されることをお勧めします。
(岐阜大・田中香お里)
【回答】
ご返答ありがとうございました。なかなか回答が無かった為, ご返答いただけないのではとあきらめていました。Drには学会での発表は控えていただいたのですが,
自分の判断が正しかったのか不安でした。ご回答下さった先生のご意見は非常にわかりやすく,
自分の判断は間違っていなかったと安心いたしました。今後, どうしても感受性データが必要となった場合,
NCCLSで推奨されている方法で再検することにいたします。ご回答ありがとうございました。
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