05/08/24
■ 毒素原性大腸菌について
【質問】
 はじめまして。私は病院で臨床検査技師をしてます○×といいますが, 毒素原性大腸菌の病原性について教えてください。

 先日, 私の病院に肝硬変を基礎疾患にもつ患者さんが激しい下痢と嘔吐で救急車ではこばれましたが, 治療の甲斐もなく敗血症性ショックと多臓器不全で亡くなられました。そのときの便培養と血液培養から毒素原性大腸菌 (O-15) で“LT陽性”が検出されましたが, “毒素原性大腸菌が敗血症をひきおこす”ことがあり得るのでしょうか。過去にこのような症例はあったのでしょうか。教えてください。

【回答】
 毒素原性大腸菌は, 旅行者下痢症の原因菌ともいわれ, 本菌の感染では高度の水様便が見られ, コレラと類似するような症状が見られます。それは下痢毒素である易熱性毒素LTや耐熱性毒素STなどを産生するためです。しかしながら, 本菌による敗血症は, コレラと同様, 一般的には認められません。この事例では, 肝硬変という菌血症を起こしやすい疾患に原因があり, 肝臓での除菌能力の低下が毒素原性大腸菌の敗血症の発症に関係しています。

(近畿大学・古田 格)


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