04/12/24
04/12/27
■ EBV, CMVに高い抗体価の持続
【質問】
 三重県津市にある○×病院, 内科医の●●と申します。初めて質問させていただきます。ここの質問箱でいつも勉強させていただき, ありがとうございます。症例は:

 23歳の女性が, 平成16年11月4日に発熱, 扁桃腫大, 肝酵素高値で紹介入院されました。発熱, 扁桃腫大は平成15年の夏にも2回あり, 抗生剤治療を受けていますが, 肝酵素高値はありませんでした。11月4日のEBV-IgM (FA) 40倍, EBV-IgG (FA) 320倍, CMV-IgM (EIA) 2.25, CMV-IgG (EIA) 28.2とすべて高値でした。“伝染性単核症”と考え, 入院, 安静, 輸液で解熱し, 炎症反応も肝酵素も正常化しました。腹部エコーで入院時あった脾腫も退院時には縮小しました。しかし11月13日, EBV-IgM (FA) 40倍, EBV-IgG (FA) 160倍, CMV-IgM (EIA) 2.63, CMV-IgG (EIA) 42.0, さらに12月2日には, EBV-IgM (FA) 40倍, EBV-IgG (FA) 320倍, CMV-IgM (EIA) 2.65, CMV-IgG (EIA) 39.2と高値が続いています。質問は:

(1) この症例はEBVとCMVの混合持続感染なのでしょうか???
(2) この症例では“免疫能低下”を考えるべきなのでしょうか???
(3) 今は特に問題なく, 日常生活を送っていますが, 放置してよいものなのでしょうか???
 どうぞよろしくお願いいたします。

【回答】
 ご質問の内容からは, 23歳の女性であり, 臨床症状や検査所見からは最も“伝染性単核症”が考えられます。伝染性単核症では, 血液像で異型リンパ球が増加しますが, 如何でしょうか???。

 検査所見でEBV-IgMやEBG-IgGなどの上昇と, サイトメガロウイルスに対する抗体価の上昇が見られるが, これをどのように解釈するかについて。

(1) 考えられるのは, EBVとCMVの重感染の場合。
 しかし, 免疫不全状態や偶然が重ならないと, このような事例は極めて少ない。

(2) 過去にCMVの感染があって, 新たにEBVに感染した場合。
 CMV-IgGは感染後も長期にわたり高値が維持され, 診断的な利用価値は少ないといわれています。しかしCMV-IgMの上昇は診断に有用とされています。この症例ではCMV-IgMもわずかに上昇していますので, 解釈が難しくなります。私はこのCMV-IgMの上昇には“懐疑的です”。

(3) 確認するためには再検し, 両ウイルスのIgGやIgM分画の抗体価がどのように変動するかを調べることも必要でしょう。

(4) 再検査は, 検査の精度を知ることからも重要です。

(近畿大学・古田 格)
【質問者からのお礼】
 今日の津は良い天気でした。回答ありがとうございました。仰る通り血液像で異形リンパ球は増加していました。EBV-IgMとCMV-IgMがともにわずかながらも高値が続くのをどう考えるべきか分かりませんでした。3回測っていますが, これからの経過も追ってみます。ありがとうございました。またよろしくお願いいたします。

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