06/08/11
■ “Eikenella corrodens”とはどのような菌???
【質問】
 ●●大学付属病院検査部で細菌検査に従事しています■■です。質問があります。

Eikenella corrodens”とは具体的に (1) どのような菌で, (2) どのように同定してゆけばいいのでしょうか??? また, この菌が髄膜炎や脳膿瘍を形成する確率や症例など, 検査方法と臨床像について教えていただきたいです。

【回答】
 E. corrodensは, ヒトおよび哺乳類の, 主に虫歯や歯肉ポケットに生息する菌種で, 微好気性菌種 (滑走菌種) です。発育にヘムを要求し, ヘムを含有する培地であれば好気環境でも発育は可能です。しかし好気環境での発育は長期間必要です。微好気性菌ですが, 最適培養環境は5%炭酸ガス, 36℃で2_4日で血液寒天またはチョコレート寒天培地上では周囲に広がる花弁状集落を形成します。集落は培地に食い込む形態とスムーズ型が混在することもあります, マッコンキー培地には非発育です。

 純培養集落では, Haemophilus 属の臭いに似た精液臭から推定可能で, グラム染色では細長い桿菌で, 細胞の先端は丸く観察されます。生化学性状の特徴は, 非運動性, オキシダーゼ, 硝酸塩還元, オルニチン脱炭酸試験が陽性, カタラーゼ, リジン脱炭酸, アルギニン加水分解, エスクリン加水分解, 尿素産生, インドール産生は陰性になります。また広域セファロスポリン系, カルバペネム系, キノロン系, テトラサイクリン系には感性, クリンダマイシン, メトロニナゾールには耐性を示します。

 E. corrodensの関与する感染症は, 歯周炎からの胸膜炎, 髄膜炎, 敗血症, 動物咬傷後の膿瘍, 軟部組織感染症などが多数報告されています。これらの感染症を惹起する確率は個々の患者の状態に関係しますので, 感染症成立の確率は不明です (確率とは, 分子と分母の比率です。この質問のような場合, 分母が設定できません)。

(琉球大学・仲宗根 勇)


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