06/08/08
■ 糞便からエロモナス (Aeromonas) 菌が
【質問】
 拝啓 保育園の栄養士です。7月の細菌検査 (糞便) で“Aeromonas hydrophila” という菌が「+3」の結果ででました。聞きなれない細菌でわからず, 調理に携わってよいのか否か, 食中毒との関連はないのか否か, 上司に聞かれています。よろしくご回答のほどお願いいたします。

【回答】
 エロモナス菌は自然界においても水や海水中に存在する細菌です。しかし, この細菌は時にはヒトにも感染を起こします。感染経路としては, 多くは汚染された水や食物の経口摂取によるものであり, 腸管感染を起こして, 下痢や発熱, 腹痛などが認められます。7月の糞便検査でAeromonas hydrophilaが3+に検出されたとのこと・・・これは“病的な検査所見”です。現在, あなたには下痢や腹痛などの症状はありますか??? あるとしたら抗菌薬 (ニューキノロン, ST合剤など) による治療が必要です。調理の仕事をしている場合には, 糞便の細菌検査を再々行い, 陰性になるまでは感染の原因となるので調理に関係する仕事をしないで下さい。恐らく最近, どこかで経口感染をしたと考えられます。例外的に, 菌が検出されているにもかかわらず, まったく症状のない健康保菌者の存在が知られています。しかし, 健康保菌者である場合には「3+」に検出されることはなく, 程度としては「1+」以下でしょう。

 Aeromonas hydrophila はグラム陰性の桿菌ですが, 赤痢菌や大腸菌などの腸内細菌科の菌種とは異なる菌種です。細菌学的性状からは, ビブリオ属に類似しており, チトクローム・オキシダーゼ反応が陽性です。現在, Aeromonas属には14菌種が含まれていますが, 臨床的に重要なものは3菌種であり, もっとも重要なものがAeromonas hydrophila です。この細菌は免疫不全者においては軟部組織の感染や菌血症を起こしますが, 健康人においてはさほど問題になることはありません。

(近畿大学・古田 格)


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