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【質問】
はじめまして。病院の細菌検査室に勤務する検査技師です。
潰瘍性大腸炎とFusobacterium varium の関係について教えてください。また,
この菌を大腸粘膜から検出する際, どのようにしたらよいのか (検体採取時の注意点や検体の処理法,
使用する培地, 培養条件など), 一般病院で検査可能な方法を教えてください。よろしくお願いします。
【回答】
潰瘍性大腸炎は病因不明の疾患です。この患者さんの病巣の潰瘍部から分離されるいくつかの関連がありそうな細菌と本疾患の病因についての研究が展開されてきましたが,
未だに解決には至っていません。近年は, 組織の深部に侵入している細菌についての検討が進んでいます。このFusobacterium
variumもそのような視点から注目された, 今まで問題にされなかった嫌気性菌で,
Gut 52: 79〜83, 2003にその論文が掲載されています。この論文に記載されている方法で材料を処理して,
検討して下さい。簡単に説明しますと, バイオプシー生検で採取した組織片をイミペネム(50μg/ml)
を含む生理食塩水液に入れ, 37℃で1時間培養して表面の細菌を殺した後で, 組織中に存在する細菌を培養し,
このFusobacterium variumを分離したようです。一般病院で, 片手間でやるような仕事ではないように思いますが,
やり方によっては可能かもしれません。バイオプシーの検体を洗浄して, できるだけ嫌気的にホモジナイズして,
嫌気性菌用の分離培地に接種することが必要でしょう。Fusobacterium variumの分離のためであれば,
変法FM培地 (日水製薬) のようなFusobacterium選択培地とGAM寒天培地 (日水製薬)
のような非選択培地を併用するのがよいでしょう。48時間培養で, 直径1 mm以上の菌集落を形成します。酪酸を産生する,
悪臭のある嫌気性菌です。産生される酪酸が病因と関係があると考えているようです。
(岐阜大学・渡邉 邦友)
【質問者からのお礼】
たいへん分かりやすく御回答いただき, ありがとうございました。この菌を分離するのは一般病院の検査室レベルでは少し難しいのかなという印象を受けましたが,
臨床の先生と相談し, 出来る範囲で挑戦してみたいと思いました。
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