05/01/21
05/01/31
■ 微生物検査に関する質問, ふたつ
【質問】
 私は総合病院の微生物検査室に勤めております臨床検査技師です。現在疑問に思っていること, 困っていることにお答えをお願いいたします。

(1) 当院には20床程の血液疾患の病棟があり, 骨髄移植も行われています。そのような患者様を(a) BCRに入室している人, (b) 免疫不全状態である人, (3) 監視培養目的だけの人に分け, 臨床医との話し合いで, 薬剤感受性検査が必要か否かを区別しています。(a)および(b)の患者様の薬剤感受性検査はいるそうです。(a)の場合はわかるのですが, (b)の場合に常在菌のいる材料で, 薬剤感受性検査が必要でしょうか???? 便, 尿, 呼吸器と提出されます。場合によっては1患者に3材料です。ごく少量検出された以外は, すべて薬剤感受性検査を実施しています。今年も検査保険点数は減点され, コスト削減を現場では考えています。もし必要でなかったら, 臨床医が納得できる根拠をお教えいただきたくお願いいたします。

(2) 陽性になった抗酸菌発育の小川培地は, どれくらいの期間保存しておくべきなのでしょうか??? また, その保存方法もお教え願います。

よろしくお願いいたします。

【回答】
(1) 薬剤感受性検査の必要性について

 骨髄移植で免疫不全状態の症例。常在菌が生息する部位からの検体 (便, 尿, 喀痰) での薬剤感受性検査の是非。これらの症例では易感染性であるため, 感染予防のために便, 尿や喀痰の検査がなされているようです。しかし, 移植医療における感染実態が明らかになるにつれ, 以前よりは培養検査の頻度は少なくなっているようです。現在でも便, 尿や喀痰などで必要に応じて同定検査を行うことがありますが, これは, 菌交代現象や菌交代症をチェックする目的のものです。しかし, 同時に3検体もの検査依頼はされません。また, 薬剤感受性試験は治療を目的にする場合を除き, 一般的には行いません。実施する時は, 明らかに感染の原因菌と考えられる場合に限定されます。保険医療の中では, ご指摘のようにコスト削減につながる医療や検査が求められています。不必要に過剰な検査は不採算になります。この点については病院長や理事長に判断してもらうのがよいでしょう。

[追記]本来常在菌が生息する部位では, 無菌的治療 (細菌学的廓清) を行っても, やがては固有の細菌や腸球菌, MRSA, カンジダなどの耐性菌が発育することになります。常在菌叢はヒトが健康を保つ上で極めて重要です。過剰な抗菌剤の投与こそが危険です。

(2) 培養に使用した小川培地の保存期間について。

 小川培地の保存は8週間でよいでしょう。長期保存は保管場所のこともあり負担になります。2%小川培地やMGITのMiddlebrook 7H9などで室温保存がなされているようです。長期保存では, このMiddlebrook 7H9 broth を-80℃に凍結保存します。

(近畿大学・古田 格)
【質問者からのお礼】
 お忙しいなか, 回答くださいましてありがとうございました。免疫不全患者の感受性検査は, 再度臨床医と話し合いたいと思います。小川培地は室温保存で管理したいと思います。今後も質問箱を楽しみに, また現場に役立てたいと思います。

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