05/03/29
■ “疑陽性”の検査結果
【質問】
 はじめまして。私は食品製造会社で微生物検査を担当してる者です。いつも参考にさせて頂いています。

弊社においては, 大腸菌群の検査を, デゾキシコレート寒天培地による推定試験, EMB寒天培地による確定試験, グラム染色・鏡検・乳糖ブイヨンによる完全試験によって実施しています。製品を対象とし, 大腸菌群の検査を実施すると, “推定試験陽性”と判定される場合があります。その製品については, 最終判定が得られるまでは一時出荷停止となります。その際, 製造および出荷部門に対し『大腸菌群疑陽性』という言葉を用いて検査の中間報告をしていました。検査に関する知識をもっていない製造・出荷部門に対し, わかりやすく, また, 危機感をもっていただくためにと思い, この『大腸菌群疑陽性』という言葉を用いていました。しかし, 検査において『疑陽性』いう言葉を用いるべきではないという意見を社内のある方より頂いたのですが, 本当に『疑陽性』という言葉は用いるべきではないのでしょうか??? よろしくお願いします。

【回答】
 言葉は, 一定の集団のなかでのコミュニケーションの道具です。従って, 貴方の会社のなかで, 『疑陽性』という言葉が, 相互に認識の違いがなく, 誤りもなく理解され, 通用しているのであれば, 特に問題はないと考えます。しかし通常使われる“ギヨウセイ”は,“偽陽性”という同じ音をもつ言葉です。“偽陽性”は, 本来“陰性”になるべき検査が, “誤って陽性”に判定された場合 (false positive) を意味します。貴方が使っておられる“疑陽性”の意味は, 質問の内容からして, “陽性”であることが疑われ, “陰性”であるとは現時点で断定できないということでしょう。“ギヨウセイ”という音だけでは誤解が避けられません。私なら, “疑陽性”ではなく, “陽性の疑い”という言葉を使うでしょう。

(琉球大学・山根 誠久)


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