05/01/31
■ 乳幼児の偽膜性腸炎の確定診断
【質問】
 とてもわかりやすく見させてもらってます。

今1歳4ヶ月の男児の便から偽膜性腸炎の起因菌であるC. difficleがCDキットで検出されました。コロニーでも培養されているとのことです。はっきりとした下痢症状はないのですが, WBC15,000, CRP 5.0くらいで炎症反応が遷延してます。ぐずりもすごく, 腹部はやや弾性硬で, 圧すと痛がる感じがします。C. difficleが検出されていることは偽膜性腸炎の確定診断となるのでしょうか??? 下痢があまりないということはあるのでしょうか??? また現在点滴としてPAPM, VCMを使っているのですが, この時期はしっかりと偽膜性腸炎に治療を絞って, 点滴は中止して内服にしたほうがいいのでしょうか??? まとまってない質問ですが, よろしければご指導お願いします。

【回答】
 大変難しい質問です。C. difficileが分離・同定されているのですから, 確かに患児はC. difficileを腸管にもっているでしょう。この症例で未確定の部分は, この患児から分離されたC. difficileが毒素を産生するのか否かが検査, 決定されていないところです。CDチェックは毒素検査ではありませんので, この点は追加して検査することが求められます。さらに難しいのは, 患児が1歳4ケ月という点です。胎内では無菌動物であった新生児がどのようにC. difficileをもつようになるのかは明確ではありませんが, 出産を行った医療環境の影響が大きいとされています。問題を複雑にしているのは, 新生児〜乳幼児の年代では, 確かにC. difficileが分離され, 分離された菌株は毒素を産生していると確認されても, この年代の子供達はほとんど臨床症状を示さないことが知られているからです。その理由としては, この時期の乳幼児の腸管細胞にはC. difficileの毒素のレセプターがない, あるいは未熟であると考えられています。従って, 質問の症例では臨床所見, 治療への反応から推定診断することになると考えます。

[参考文献]
Knoop FC, Owens M and Crocker IC: Clostridium difficile: Clinical disease and diagnosis. Clin Microbiol Rev. 6: 251〜265, 1993.

(琉球大学・山根 誠久)


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