■ グラム染色の原理 | ||
【質問】
○×大学微生物学講座で教員をしている者です。グラム染色の原理について質問があります。現在, 学生実習でグラム染色を行っております。レポートとしてグラム染色の原理を書かせましたら, カラー版 「染色法のすべて」(1988年 MedicalTechnology 編)における以下の文章を転載してきた学生がいました。
私が習った. または理解している原理である細胞表層構造の物理的な違い (ペプチドグリカン層の厚さなど) がグラム染色性に関して主要な因子であるとは違う記述であり, いったいどういった背景でこのような記述がされているかについて非常に興味を持ちましたが, 調べてみてもわかりませんでした。もしよろしければ, 教えていただきたいです。よろしくお願いします。 【回答】
Christian Gram (1884年) は肺炎患者標本中の肺炎球菌を鑑別染色するために, 標本を無水アルコールに浸し, エールリッヒのアニリンゲンチアナバイオレットで一次染色, ヨード溶液 (ヨード1: ヨードカリ 2: 水300) を作用させ, 無水アルコールで完全に脱色するまで浸した後, オイゲノールに漬け (この時点で肺炎球菌は濃青色に, 他の細胞の核と基本組織は淡黄色に染まる), 最後に弱いビスマルクブラウン液に漬け, 再度アルコールで脱色する方法を1884年に考案しています。これを改良したのがHucker & Conn (1923年), Lillie (1928年), そしてPreston & Morrell (1962年) などです。このように, グラム染色は細菌細胞の表層構造の違いによって染色性が異なることを利用しており, 一次染色液とヨウ素液との複合体の大きさと細胞壁ペプチドグリカン層および細胞質膜の密度との関係, さらに脱色剤と細胞壁蛋白・脂質の溶解度の関係によって染別しています。 以上, グラム染色の機序を簡単に述べましたが, これらのことから, 私もご質問のお考え, 判断で十分だと考えます。古くは証明できないいくつかの説が唱えられた時代もありましたが, 現在では上記内容で概ね納得しているものと思われます。ただし, 分類学上のグラム染色性が示されている菌種であっても, 染色液の種類, 染色方法によって異染色される場合もまれに見られますので注意が必要です。特にハッカー変法は, 一次染色とルゴール液の作用不足, エタノールによる脱色加減, サフラニン液の難染色性が指摘され, 熟練を要する方法のひとつでした。これを解消したのがBartholomew & Mittwer 法であり, 私達はさらにこれを改良てしneoB&Mワコーを紹介していますので一度お試しください。 (大手前病院・山中 喜代治)
|