■ グラム染色でのメタノール固定 | |
【質問】
微生物 (主に乳酸菌) について研究している者です。グラム染色での固定法で, 今度から“メタノール固定”を試しに行ってみようと思っています。そこで質問があるのですが・・・ (1) メタノールに“浸して固定”をしようと考えているのですが,
その際にコンタミの恐れはないのでしょうか???
【回答】
固定操作前に大切なことは, スライドグラスと材料の塗抹法です。スライドグラスはクリーンな状態を保った清浄な製品で, 剥離防止作用を施したものが最良です。また, 材料はなるべく薄く塗抹し, 十分乾燥することが大切です。粘性の強いものを濃厚に塗抹すると, 固定や染色がうまくいかない原因になります。メタノールに“浸した固定”とは, ガラス瓶に満たしたメタノールにスライドグラスを浸す操作のことだと思いますが, この時剥離した材料が他のスライドグラスに接触し, 貼り付く可能性は極めて少ないと思います。もちろん使用頻度にもよりますが, 薄めで十分に乾燥した標本であればコンタミを心配することはないと思います。私達は1日30枚程度の一般検査用の材料を塗抹したスライドグラスの固定を行った最後に, 無菌的な材料を塗抹したスライドグラスを浸し, 固定・染色・鏡検し, コンタミによる菌の付着がないか否かを試験しました。その結果, 連続5日間使用のメタノールでもまったく菌の付着は認められず, コンタミはないであろうと確信しております。また, メタノール交換時期ですが, 私達は1日1回の交換を基本としており, 使用頻度が少なければ数日間使用してもよいと考えています。ただし, 脳脊髄液などの本来無菌的な材料を慎重に固定したい場合は, 塗抹面を上にしてメタノールを上から満載する方法を推奨します。また, メタノール固定後の乾燥の有無ですが, 一般には脱色性を防ぐために, 乾燥した後に染色操作に入ります。ただし, アルコール成分が幾分残っていても染色性にはあまり影響はないようです。これはB&M法による実験成績ですので, ハッカー変法など, 他の方法でどうなるかは定かではありません。 (大手前病院・山中 喜代治)
【質問者からのお礼】
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