06/01/24
■ 牛タン, 豚タンからサルモネラ菌
【質問】
 こんにちは, 以前ここでお世話になりました○○という食肉加工会社で品質管理を担当しております◆◆と申します。牛タンと豚タンのサルモネラ検査についてお聞きしたいのですが。

 先日協力工場から依頼があり, 当社にて牛タン・豚タンについて細菌検査をすることになりました。数十検体について検査したところ, 大体10検体に1つくらいの割合でサルモネラの陽性判定が出ました。検査を依頼してきた協力工場に確認したところ,「以前, 検査機関に依頼していた頃にも牛タン・豚タンでサルモネラ陽性判定が出たことがあるが, そこまで頻繁には出なかった」と言われました。その工場で加工された牛タンおよび豚タンにサルモネラが存在するのは確かかと思うのですが, 以下のことについて恥ずかしながらよく分かりません。

(1) 牛タンや豚タンにはもともとサルモネラが存在するものなのか???
 検査を依頼してきた製造工場では鶏肉を一切使用しておらず, 工場に鶏肉が搬入されることはないというのです。従って, 加工場内でコンタミが起こることはないと思われます。そう考えると, 原料の段階でサルモネラに汚染されていると考えられますが, もともと牛タンや豚タンがサルモネラを持っていたと判断してもいいのでしょうか?

(2) 検査機関との検出頻度の違いは???
 当社では簡易検査キット (日水 コンパクトドライSL) を使用しているのですが, 簡易検査キットの場合, サルモネラと似た菌でも陽性判定が出ることが多いということなのでしょうか???

 特に(2)に関しては, 以前当社でO-157について同様に簡易検査キットを用いて検査を行ったところ, 陽性判定が出て大騒ぎになったことがあり, 検査機関に再検査を依頼した結果「陰性」と判定されました。いろいろ調べてみると「一部のサルモネラなどの他の菌でもO-157検査キットの陽性判定に引っかかることがある」という話を聴いて胸をなでおろしたという経緯があり, 非常に気になっております。前回同様に初歩的な質問かと思われますが, よろしくお願いいたします。

【回答】
(1) 牛タンや豚タンにはもともとサルモネラが存在するものなのか???
 確率的には低いと思いますが, 存在する可能性があります。海外の報告による牛肉の陽性数 (%) は肺臓68.9%, 胃28.9%, かしら肉30.0%などがあり, 豚肉では堵体17.9〜23.3%, 肝臓29.3〜72.0%, 心臓77.8%などです (食中毒菌の制御, 坂井千三編集, 中央法規出版)。豚の堵殺場の現状では, 舌と扁桃腺はいっしょに処理されますので, 扁桃腺からのサルモネラ汚染があります (Borch, E., Nesbakken, T., and H. Christensen: Hazard identification in swine slaughter with respect to foodborne bacteria. Int. J. Food Microbiol., 30: 9〜25, 1996)。また, 牛の舌も, 堵殺場においてサルモネラ汚染の可能性が考えられますし, 胃内にサルモネラがいれば反芻することにより舌にサルモネラが付着することも考えられます。

(2) 検査機関との検出頻度の違いは???
 検査機関は公定法で検査しているため, 分離菌を同定して最終的な結果を出している筈です。それに対してコンパクトドライSLなどの簡易検査キットは, サルモネラのスクリ_ニング検査が主な目的として開発されていて, 同定までの工程を含みません。仮に, 現場ですべての検体に対して公定法で最後まで検査しようとしたら, 時間や人手が足りなくなるのではないでしょうか。CD-SLで「陽性」と判断した場合, サルモネラ用選択培地へ画線塗抹し, 24時間培養した後, 疑わしいコロニーについてO多価血清でスライド凝集をして確認することをお願いします。また, リジン脱炭酸試験や運動性が試験できるLIM培地の併用を勧めます。

(日水製薬・小高 秀正)

【質問者からのお礼】
 こんにちは。回答いただきました◆◆です。このような初歩的な質問にも, 前回同様, 親切にご回答いただきましてありがとうございます。今後の参考にさせていただこうと思います。


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