06/06/28
■ 肺炎球菌について
【質問】
 いつもお世話になります。細菌検査の苦手な検査医です。

肺炎で入院した患者で, 尿中肺炎球菌莢膜抗原は陽性でしたが, 血液培養では肺炎球菌が検出されませんでした。肺炎球菌の自己融解により, 死菌となってしまった??? と考えました。菌が増殖しないため, 薬剤感受性試験が実施できず困りました。このような場合にはどう対処すればよいのでしょうか???

【回答】
 まず, 結論はどうしようもありません。検査の原理を考えてください。薬剤感受性試験は菌発育の有無をシグナルとした検査ですので, 発育可能な生菌が入手できなければどうしようもありません。血液培養ボトルに一度は肺炎球菌が発育し, 自己融解によって生菌が回収できなかったのだと仮定すると, 血液培養ボトルにはその残骸が残っています。私なら, この残骸から薬剤感受性試験に相当する情報が得られないのか工夫します。残骸には菌体構成成分の蛋白や遺伝子が含まれるでしょう。例えば, 特定の薬剤を分解する酵素活性は検出できないのか, あるいは特定の薬剤の耐性化を意味する耐性遺伝子が培養ボトルから検出できないかといった工夫です。これらは直面する患者への解決策の模索ですが, 次の患者への改善策も考えておく必要があります。肺炎球菌が想定される場合には, 自己融解するまで放置するのではなく, 培養のより早い段階でのチョコレート寒天培地への接種が必要でしょう。

(琉球大学・山根 誠久)


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