06/02/07
■ 発酵食肉製品の細菌検査について
【質問】
 はじめまして。突然のメールで失礼いたします。私はハム・ソーセージなどの食肉加工製品の製造・加工会社で微生物検査を担当している者です。今回メールを差し上げたのは, サラミなどの発酵食肉製品の検査方法についてお伺いしたかった為です。

 発酵食肉製品を菌検査する際, 発酵乳製品同様に乳酸菌を除いた菌数を一般生菌数としてよいのでしょうか??? 

 そして, 乳酸菌の菌数を調べるにあたり, 乳酸菌飲料の菌数測定用培地であるBCP加プレート培地を用いて問題ないでしょうか???

 また, このBCP加プレート培地の使用方法ですが, 以前からチーズを使った製品などで使用してみてはいるのですが, かなり培地の黄変範囲が広くでてしまい, その範囲中に存在する菌がすべて乳酸菌と決めてしまっていいものかどうか判断しかねています (乳酸菌群の選択培地ではない様ですので・・・)。希釈が足りないと黄変しないし, コロニーが10〜20程度になるように希釈しても, 黄変範囲が広すぎて判断に困るし, さらにコロニーが1, 2個になるように希釈すると, 今度は検査誤差が気になります。

 原材料に使っている菌を対照として判断したらどうかとも考えましたが, 弊社製品には輸入して加工 (スライス) しているサラミなどがありまして, これについてはどうしたらいいか考えあぐねています。

 専門の検査機関などでは発酵食肉製品をどのように検査しているのでしょう??? やはり専門の検査機関に外注するほうがよいのでしょうか??? 長くなりましたが、よろしくお願い致します。

【回答】
 最初に, 発酵食肉製品を含めた製品の微生物検査について, 貴方の施設では検査員に検査する項目を全面的に任せているのでしょうか。会社として, 製品の品質管理上の規格や検査項目を明確にしておく必要があります。

 一般生菌数についてですが, 発酵乳製品の発酵乳や乳酸菌飲料では乳酸菌数または酵母数 (1 ml当たり) 10^7以上という規格があり, これを証明するために他の一般生細菌と区別する必要がありますが, 発酵食肉製品には“乳酸菌数の規格は見あたりません”。ですから, 一般生菌数は乳酸菌数も含めて一般生菌数として試験結果を出すのが妥当と考えます。乳酸菌の菌数をBCP加プレート培地で測定するのには問題ないと考えます。BCP加プレート培地の使用方法は, 食品衛生小六法の「乳及び乳製品の成分規格等に関する省令」で, 黄変したものが乳酸菌の集落とし, 集落数30_300までの平板のものを測定するとなっています。回答者の経験では, 乳酸菌はBCP加プレート培地で小さな集落を形成します (菌数測定時には集落の観察が重要です。乳酸菌はグラム陽性菌ですから, 観察した集落のグラム染色も有効です)。また, 調製したサンプルのpHが酸性でしたら, 滅菌した1N-NaOHなどを用いてpHを7.0付近に調整すると, サンプルによる培地の黄変を防ぐことができます。専門の検査機関などで, 発酵食肉製品をどのように検査しているかは具体的にはわかりません。一度, 検査機関へ外注し, 質問者自身が行った検査結果と比較してみたらいかがでしょうか。もし結果が大きく違うようでしたら, 依頼した検査機関と納得が行くまで話し合ってください。

 最後に, 発酵食肉製品は, 加工方法によって菌叢が違ってくることや乳酸菌のみならず酵母やカビも表面に増殖する可能性があることを忘れないで下さい。以下のwebサイトで, 畜産試験場の千國浩一氏の書かれた発酵食肉製品について, いろいろな文献を見つけることが出来ますので参考にしてください[http://rms1.agsearch.agropedia.affrc.go.jp/contents/kaidai/ryuutuuriyouNo25/25-3-7-2_h.html]。

(日水製薬・小高 秀正)


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