05/06/23
05/07/06
■ C型肝炎ウイルス抗体価について
【質問】
 よろしくお願いします。私は現在, 看護師の仕事をしておりますが, 仕事中にC型肝炎ウイルス (HCV) の患者様の針刺し事故を起こし, 定期的な採血を受けている最中です。針刺し事故の日が3月5日。その日の採血の結果, HCV抗体(第三世代)が0.2。その後, 採血を3月19日 HCV抗体(第三世代) 0.2, 4月23日 HCV抗体 (第三世代) 0.3と, 一応HCV抗体の基準値1.0未満としてはマイナスなのですが, 0.2から0.3に上がってきました。私は今までに針刺し事故の経験が以前に一回 (その時はB型肝炎ウイルス-HBVの患者様でした) あるのですが, その時も針刺し事故の直後の採血でHCV抗体 (第三世代) 0.1だったのが, 約2ヶ月後の採血で, 何故かHCV抗体 (第三世代) が0.2と上がりました。それで思うことなのですが, “低抗体価は過去の感染を意味する”と本で見ましたが, 私の場合は, いまだHCV抗体の値が1.0未満ですが, 昔0.1だったのが, 現在の値0.3となり・・・ということは極 (?) 少量のHCV感染をしているということなのでしょうか。なお, 定期的な採血にHCV-RNAは測ってもらっていません。肝機能の結果については総ビリルビンのみ2.5で, 高値はこれのみです (以前から私のビリルビン値は1.0以上あり, 体質的なものと見られていますが・・・。今回の2.5は初めてこんなに高い値になっています)

 以上, 不安なところを質問させていただきましたが, よろしくお願いします。

【回答】
 はっきり言って, 0.1, 0.2, 0.3といった細かな値を余りにも読み過ぎです。HCV抗体価には感染している (陽性, 1.0以上)か, 感染していない (陰性, 1.0未満) かの2つしかありません。1.0未満で測定値が多少変動するのは, 臨床検査としては当たり前のことです。何故なら, 非常に極々少ないシグナルの値 (例えば発色の程度) が変動することは避けられない検査の限界だからです。われわれはこれをバックグランド (雑音のようなもの) と呼んでいます。貴女の場合には1.0未満が継続しており, 今現在は感染したとは言えません。まだ針刺し事故から2ケ月に達しない経過なので, この後1.0を越えて陽性になる可能性がまったくないとは言い切れませんが, ほぼ大丈夫だと考えます。

 C型肝炎ウイルスが感染したか否かの判定には, C型肝炎ウイルスのコア抗原の測定が有効です。心配でしたら, 担当医にお願いしては如何でしょう。輸血によるC型肝炎ウイルスの感染の有無にも利用されていますから。

 それと, 2回も針刺し事故を経験されているようですが, むしろこのことが気になります。基本的な注射針の取り扱いに問題があるのではないでしょうか。B型肝炎ウイルス, C型肝炎ウイルスといった既知のウイルスは検査して感染の有無を確認できますが, 未知の“X型肝炎ウイルス”は検査できません。

(琉球大学・山根 誠久)


【質問者からのお礼】
 お忙しい中ご回答をいただき, 感謝しています。注射器の取扱いについては今後, より一層気をつけたいです。本当に有難うございました。


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