06/06/02
■ 皮膚の創感染について
【質問】
 はじめまして。私は細菌学に興味を持っている医学生です。お忙しいところ失礼します。臨床実習中に次の2点について疑問を持ったのですが, 成書などで調べても十分理解できないので, このメールを送らせて頂きました。

(1) 転倒などの外傷で生じた上肢の皮膚の創に対し, 感染予防目的に抗生物質を投与する際の考え方として,S. epidermidisS. aureusなどのグラム陽性球菌を主なターゲットにして抗生物質を選択する」という考え方は正しいでしょうか??? 皮膚の常在菌は多種あると思うのですが, どこまでターゲットにして抗生物質の選択を考えればよいのかなどがよく分からないのです。

(2) また成書には, 上記のような場合に「嫌気性菌の感染がある場合」という記述も見られたのですが, 具体的にどのような嫌気性菌が皮膚の創感染では重要になるのでしょうか??? これもあまり記述が見られず, 理解できないでおります。

 漠然とした質問で申し訳ありません。お手数をおかけして恐縮ですが, ご教授頂けるとありがたく存じます。

【回答】
(1) 結論から申しますと正しいです。ただし, 抗生物質の予防投与の効果には限界があり, 受傷後, できる限り早期に創部を洗浄することが非常に重要です。滅菌水や生理食塩水がない場合は, 大量の水道水で洗浄することをお勧めします。抗生物質を投与するならば, ペニシリン系 (例えばABPC/SBT) や第一世代セフェム系抗生物質を長くても3日間程度でよいと思います。

(2) 例えば農作業など, 土壌を扱う作業中に受傷した場合は嫌気性菌感染の可能性が出てきます。この場合は破傷風菌感染を念頭に置きます。その際も重要なことは可及的速やかな除染です。我々が実施しています方法は, 除染後, 過酸化水素水による洗浄です (これには明らかなevidenceは示されていません)。破傷風トキソイドに関しては, 全例適応にはしていません。除染までの時間が2〜3時間以上経過している例や汚染が顕著な例などです。抗生物質投与については, ペニシリン系 (PIPCは使用しない) が適応です。処置後, 筋肉のこわばりや“口を開けにくい”などの症状があれば破傷風の可能性があり, 三次救急を扱っている病院に紹介してください。

(愛媛大学救急部・相引 眞幸)


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