06/10/31
■ 皮下穿刺液の抗酸菌陽性
【質問】
 いつも勉強させていただいています。●●病院に勤める臨床検査技師です。

 72才女性の患者さまです。前胸部の多房性腫瘤の穿刺液の抗酸菌培養にて, 塗抹 (陰性), 培養 (陽性), DDH法による同定でTB-COMPLEXでした。発熱および呼吸器症状, その他感染兆候などの症状もありません。こういう場合, 先生が主治医なら積極的に抗結核薬剤による治療を行いますか??? 病態も含めご教授おねがいします。

【回答】
 77歳の女性で, 前胸部の多房性腫瘤の穿刺液からM. tuberculosis complexが分離されたとのことですが, TB complexではなく, さらにPCRにより菌種の同定を試みる必要があります。M. tuberculosis であれば治療の必要があります。検査材料は多房性腫瘤の穿刺液とありますが, 前胸部には乳線もあり, 乳線か, それ以外の部位かを明らかにする必要があります。また, 多房性腫瘤とありますが, この大きさ, 極在 (皮膚, 皮下組織, 筋肉など) が明らかにされていません。さらに, 多房性腫瘤は病名ではないので, どのような腫瘤かを明らかにする必要があります。これらを明らかにすることから, 治療法も決まってきます。文面から想像すると, ドクターは恐らく感染を疑い, 穿刺液の細菌検査を依頼したと考えます。ここでは, 腫瘍部への感染か, あるいは感染性の膿瘍なども疑われます。結核であれば, 細菌検査だけでなく, 組織検査を行えば結核の診断が可能です。組織診断で結核とされれば, 抗結核剤による治療が必要です。しかし, 結核性所見や感染所見がないのであれば, 経過を観察する程度にして, 積極的には抗結核剤を投与しなくてもよいでしょう。

(近畿大学・古田 格)


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