05/11/01
05/11/04
■ 非加熱食品の大腸菌規格について
【質問】
 私は香辛料を扱う会社で品質管理の仕事をしている者です。大腸菌 (病原性大腸菌) について質問があります。

 現在, 色々な文献を調べている最中なのですが, 加熱殺菌していない香辛料の大腸菌に関して“陰性”の規格を設ける義務はあるのでしょうか???? 加熱殺菌していない上に, 土の中で育つ香辛料から大腸菌が検出されることは普通だと思うのですが・・・。加熱した食品に関しては, 大腸菌 (病原性大腸菌) の規格があるようなのですが, 非加熱の食品 (香辛料) に関して, 大腸菌 (病原性大腸菌) の規格は食品衛生法などで設けられているのでしょうか??? また, その参考資料があれば教えてください。

 また現在, 当社では大腸菌群 (DESO培地) の検査しか行なっていないのですが, 大腸菌を培養する際に最も感度が良いとされる培養法があればお教え下さい。その際に, 病原性大腸菌の同定が一緒に行なえるような培養法があればそちらも教えてください。

 初歩的な質問かとは思いますが, 何分勉強不足で品質管理初心者のため, ご回答頂ければと思います。よろしくお願いいたします。

【回答】
 香辛料に関して回答します。香辛料に関して, 大腸菌の規格は食品衛生法などで設けられていません。食品衛生法 食品の規格基準のD各条には, 香辛料について記載がありません。平成12年12月4日付けで全日本スパイス協会から厚生大臣宛に要請書 (香辛料の放射線許可の要請: 諸外国では既に放射線による殺菌が行われている) が出されています。その中に, D各条に“香辛料”の項の追加も要請されています。D各条に記載されている近い食品では,「穀類, 豆類及び野菜」の成分規格があります。しかし, 微生物に関する規定はありません。参考として, ICMSF (国際食品微生物規格委員会) では, 微生物数として<10^6CFU/gramが許容できるとしています。日本国内の弁当およびそうざいの衛生規範では, 製品の内, 卵焼, フライなどの加熱処理したものは, 生菌数が10^5/gram以下, 大腸菌は「陰性」と記載されていますが, 製品の内, サラダ, 生野菜などの未加熱処理のものは生菌数が10^6/gram以下と記載されているだけで, 大腸菌に関しては記載されていません。また特定加熱食肉製品では, E. coliが1 gram中100以下と定められています。基本的な考え方ですが, 食品衛生法の第1章の総則にありますように, 飲食に起因する衛生上の危害の発生を防止することが重要です。ですから, 食品衛生法の規格に示されていないからといって, 大腸菌 (糞便汚染の指標細菌) が検出されてもかまわないということではありません。長期保管 (貴社の管理の仕方) により, 原料仕入れ時の少量の大腸菌が増殖する恐れもあります。恐らく貴社の製造の歴史から, 社内で原料に対する規格が設けられていると思います。質問者は初心者ということなので, 社内の先輩にその規格が設けられた根拠などを質問されたら如何でしょうか。一般的に香辛料での問題は, 香辛料を汚染している芽胞菌が缶詰やハム, ソ_セ_ジなどの腐敗を引き起こすことです。食中毒という点では, ノルウエ_で黒胡椒によるSalmonella oranienburgが報告されています (American Journal of Epidemiology, 119: 806〜812, 1984)。大腸菌の検査は, 冷凍食品のE. coliの試験法, 大腸菌群の検査は氷菓の大腸菌群検査法に準じて行うことができます。また, 病原性大腸菌, 特に大腸菌O157の検査法は平成9年7月4日衛食第207号, 衛乳第199号として厚生省より公表されています。病原性大腸菌の同定がすべて一緒にできる培養法はありません。参考資料として「食品衛生小六法」をお勧めします。

(日水製薬・小高 秀正)


【質問者からのお礼】
 先日,「非加熱食品(香辛料)の大腸菌規格について」質問した者です。とても分かりやすい回答をありがとうございました。今後ともしっかりと勉強して行きたいと思います。本当にありがとうございました。


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