05/08/02
05/08/03
■ 百日咳ではCRPが上昇しない
【質問】
 いつもこのコーナーで勉強させていただいております。本当にありがとうございます。

 この度, “百日咳の疑い”で検査依頼されたのですが, 培養はできなかったのでPCRを依頼し“陽性”となりました。検体検査では白血球 (リンパ球) が多く, CRPは正常値内でした。教科書にも, “百日咳ではCRPは上がらない”と書いてありますが, 何故なのか調べてもわかりませんでした。宜しくお願いします。

【回答】
 何故, 記述されていないのかは, “明らかにする根拠がない”ためと考えます。私もこれが事実であるかどうかは知りません。

 CRPは身体に炎症性疾患や組織破壊性疾患があれば, 2〜3時間以内に血中に増加してくる急性期反応性蛋白であり, 2〜3日で最高に達しますが, 炎症や組織破壊が治まれば24時間以内から減少が始まり, 数日で正常化するといわれています。百日咳も, 急性期においては局所の炎症や毒素による上皮組織の破壊を伴いますので, 急性期であれば当然, CRPは上昇すると考えます。CRPが正常値であったのは, 回復期での測定であることも想定されます。恐らく, 病初期から, 繰り返してCRPを測定していれば, 百日咳であれば“陽性”になったでしょう。CRPは, 炎症などで活性化されたマクロファージの産生するサイトカイン (IL-6など) が肝細胞でのCRP産生を刺激し, その結果, 血液濃度が上昇して来ます。そのため, 高度の肝障害があれば産生量は低下します。

〔追記〕CRP値において, 低値化させる干渉因子として副腎皮質ホルモンや抗炎症剤などが知られております。さらに, 血清検体は不活化しないと“偽陰性”になることもあるようです。

(近畿大学・古田 格)


【質問者からのお礼】
 早速教えていただきましてありがとうございました。関係部署にコピーを配り, 皆で勉強させていただきました。暑い盛りですのでくれぐれもご自愛ください。


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