06/01/17
■ “イクラが酸っぱい”
【質問】
 いつも拝見させていただいています。レストランの検査機関に所属しています。先日, 店舗で使用している“イクラが酸っぱい”とのクレームがあり, 乳酸菌の検査を実施いたしました。以下の2点について質問をさせていただきます。

(1) BCP加プレートカウント寒天培地で混釈を行ったところ, すぐに培地が黄色くなってしまいました。このようになってしまった原因と対策を教えてください。検体10 gを滅菌リン酸緩衝液 90 mlで10倍希釈行いました。検体のpH 4.7, 塩分8.9%です。

(2) 今回BCP加プレートカウント寒天培地を使用しましたが, このようなクレームがあった食品の検査として適切な培地や検査法がありましたらお教えください。

初歩的な質問で恐縮ですが、よろしくお願いいたします。

【回答】
(1) BCP加プレ_トカウント寒天培地のpHは7.0で, BCPの色は紫 (中性) で, ブドウ糖が分解されて酸性になると黄色 (酸性) になります。混釈してすぐに黄色になった原因は“検体のpHが低い”ためです。試料作製時にpHを確認し, 滅菌した1N-NaOHなどで試料を中性に調整することを勧めます。

(2) 培地はBCP加プレ_トカウント寒天培地を用い, 試料のpHに注意すれば今までの方法でよいと思います。

 最後に, 質問者が何故, 乳酸菌の検査をしようと考えたのが分かりません。今までに大量の乳酸菌を“イクラ”で確認されているのでしょうか。「イクラ製品の衛生的取扱いについて」(平成10年9月18日 衛乳第231号) では, 出荷時の一般生菌数が10^5/gram以下となっています。今回の“イクラが酸っぱい”の原因が, 御社の保管・取扱いに問題があったのか, 製造元や流通に問題があったのか分かりませんが, 保存性を向上させるためにpHを人為的に下げていることも考えられます。岩手県はイクラに関する加工技術の研究をし, クエン酸がイクラ塩漬後の卵膜硬化に伴う品質劣化防止によいことを報告しています。一般的に, 魚のpHは6近辺ですから, pH 4前後まで下げるほどの大量の乳酸菌がイクラ上で繁殖するとは考え難いです。社内での取扱いなどを確認し, 問題がないようでしたら, 製造元などに確認することを勧めます。

(日水製薬・小高 秀正)


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