05/07/25
05/07/28
■ 院内感染対策での“アウトブレイク”の判断基準
【質問】
 MRSAの入院新規患者数を毎月報告していますが, どれほどの人数になれば“アウトブレイク”といえるのか, その判断の基準をご指導ください。当院ではまだ異常に増加した傾向はありませんが・・・基本的な質問ですみません。

【回答】
 “アウトブレイク”の定義になるかと思います。まず東京都の出している「感染症の調査と危機管理のためのマニュアル」では,「アウトブレーク (outbreak): ある疾病の頻度が一定の地域に限局して増加すること。多くは感染症による」またAPIC (米国感染管理疫学専門家協会) の本ではoutbreak = epidemic (エピデミック) であり,「ある地域あるいは一定の集団のなかで, ある一定の期間に予想以上の頻度で疾病が発生すること」となっており, 明確な基準はありません。ただ一般的には, 発生率が統計学的に有意な変化, または平均+2×[標準偏差]を越えたときに“アウトブレイク”と判断しています(1)。したがって, MRSAの発生率が, 平均+2×[標準偏差]を越えた時となります。発生率の計算方法は成書をお読みください。ただ, これは疫学上の定義であり, 実際に院内感染をより早く見つけ, 発生が少ないうちに対処するためには, 常にMRSAの検出と患者数に目を光らす必要があります。毎月の報告が出てから判断するのでは遅い場合もあります。

[参考文献]
牧本清子: 病院感染のサーベイランス入門. メディカ出版 (1999)

(京都府立医科大学・藤田 直久)
【追記】
“アウトブレイク”の発生を疫学的に確定するためには, 平素の通年的なMRSAの“平均検出率”あるいは“平均MRSA感染 (保菌) 患者数”を把握しておく必要があることに気付いてください。統計学的に有意な平均値を把握する目的で毎月の集計が必要になるのです。
(琉球大学・山根 誠久)


【質問者からのお礼】
 ご回答ありがとうございました。細菌は生き物なので迷うことも多々あり これからもご指導お願いいたします。


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