■ IVHカテーテルの培養方法について | |
【質問】
血流感染の診断におけるIVHカテーテルの培養法・提出法につき御助言をお願いします。カテーテル感染が疑われる時, 血液培養は当然として, それと並行してカテーテルを無菌的に抜去し, 培養に提出すると思いますが, その時の提出方法・培養方法のスタンダードについてです。培養方法につき: (1) 定量培養
といった方法があるようで, CDCのガイドラインなどでは上記 (1)と(2) が推奨されているようです。ですが当院では, 検査室担当者と相談しましたが, 定性培養しか施行することができないようです。皆様の御施設では(1)や(2)の方法が一般的に行なわれているのでしょうか。 また, (2) の方法では5 cmと明確に提出するカテ検体の長さが明記されていますが (根拠は知りません), (1)と(3)の方法では具体的にカテーテルのどれだけを培養するのがよいのか・・・長い方が感度が高くなるのか, 関係ないのかといったことにつき, よい文献が見当たりません。 当院でも, 検査室での処理手順上はカテーテル先端2〜3 cm程度の部分の培養がやりやすいようですが5 cm〜10 cm分を培養したほうが感度に優れるのでしょうか??? 御助言いただければ幸いです。よろしくお願いいたします。 【回答】
3つの検査方法が質問に提示されていますが, (2) の半定量培養が最も広く使われ, 解析・評価されている方法です。1977年にMakiらが報告したもので, “Maki法”と呼ばれます。3 から4 cmのカテーテル断片を血液寒天培地に4回回転させてカテーテルの外側に付着する細菌を培養する方法です (質問者の“5 cm”という長さはなにに書かれていたものでしょうか。回答者は確認できませんでした)。当初は15 CFUが陽性・陰性の判定区分値でしたが, 現在では5 CFUを採用してより感度を高める施設もあります。(1) の定量法は, (2) の半定量法のもつ弱点 (カテーテルの内腔を検査していない) を解消する目的で考案されたもので, “Cleri法”と呼ばれます。血管内に挿入された部分の長さに応じて, カテーテル内腔を2から10 mlのtrypticase soy brothで3回内腔を洗浄し, その洗浄液を定量培養します。洗浄操作の代わりに超音波処理する方法も提案されています。10^2あるいは10^3 CFUを判定区分値とします。 その他, 定量的に菌濃度を測定する血液培養法で, カテーテルを通過させて採取した血液と直接静脈穿刺して採取した血液を同時に培養し, カテーテル通過血液の菌量が4倍以上, または液体培地を用いた全自動血液培養装置をもつ施設では, カテーテル通過血液での陽性判定時間が, 直接静脈穿刺して得た血液の陽性判定より2時間以上早い場合をCRIとするといった方法も提案されています。 最後に納得できないのが, “検査室担当者と相談しましたが, 定性培養しか施行することができないようです”という記載部分です。臨床検査は一定の目的をもって行うものです。(3) の定性培養は, 現時点でまったく診断的意義はないと考えられています。漫然と培養し, Staphylococcus epidermidisを同定しているだけでは, 乏しくなってきた日本の医療資源を無駄に消費しているだけです。もし半定量あるいは定量培養が必要であると判断されれば, それを実現する方向で問題を解決していく姿勢が検査室に求められます。(1) あるいは(2) の検査方法をよく理解してください。特別な器械も設備も必要としないことが理解できると思います。後は“やる”という強い決意だけです。 [参考文献]
Cleri DJ, Corrado ML, Seligman SJ: Quantitative culture of intravenous inserts. J Infect Dis 141: 781〜786, 1980. Baron EJ, Weinstein MP, Dunne Jr WM, Yagupsky P, Welch DF, Wilson DM: Blood Cultures IV. Cumitech 1C, American Society for Microbiology, Washington, DC, 2005. (琉球大学・山根 誠久) |